手術支援ロボット「ダビンチ」

泌尿器科医 三輪好生氏

 ロボット支援手術というものをご存じでしょうか。DaVinci(ダビンチ)というアメリカ製のロボットが最も有名ですが、現在は日本製のロボットも登場し多くの手術支援ロボットが医療現場で活躍しています。

 日本では2012年に前立腺がんに対してロボット支援手術が初めて保険診療で受けられるようになりました。その後、泌尿器科の領域では腎臓がん、膀胱(ぼうこう)がん、腎盂(じんう)尿管がんなどでも保険適応となり、最近ではがん以外にも膀胱瘤(りゅう)や子宮脱など女性の骨盤臓器脱に対する仙骨腟(せんこつちつ)固定術もロボット支援手術で受けられるようになりました。また、泌尿器科領域以外でも肺がん、食道がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、子宮体がんなどに対する手術が保険適応となっています。

 ロボット支援手術と聞くと医師が指示を出せば、あとはロボットが自動的に手術をやってくれるようなものを想像するかもしれません。しかし実際にはロボットを操作するのは人間であり、自動的には行ってくれません。ロボットを操作するためには資格が必要で、しっかりとトレーニングを受けて経験を積む必要があります。ただ従来の腹腔(ふくくう)鏡手術と比べると技術を習得するのに必要な時間は短くて済みます。

 ロボット支援手術は従来の腹腔鏡手術と同じように、おなかに刺した細い管から内視鏡と鉗子(かんし)と呼ばれる手術を行う道具を挿入して、おなかの中の様子を内視鏡のモニター画面で見ながら手術を行います。ロボット支援手術の場合は、手術をする医師は患者さんとは離れた場所にあるコンソールと呼ばれる操縦機に座ってロボットを操縦します。コンソールの中では内視鏡画像を解像度の高い3D画像で見ることができ、自分の指の動きを直接鉗子に伝えることができます。ロボットに取り付けられた鉗子は患者さんのおなかの中で、まるで自分の指のように細かく動かすことができます。より精度の高い手術を通常の腹腔鏡手術とほとんど変わらない費用で受けることができるのは患者さんにとっても大きなメリットと言えます。

 今後、さらにロボット手術の適応となる手術は増えてくると思われます。また、新たな手術支援ロボットの開発も進んでおり、おなかに刺す管が一本だけで手術ができるロボットや人工知能(AI)を搭載したロボットも今後登場する見込みです。しかし、ここで忘れてはいけないのはロボット支援手術のような医療技術が進歩しても治療方針を決めて手術を行うのは人間であるということです。最善の治療を受けるためには患者さんと主治医との信頼関係が重要であることは今も昔と変わらないと言えます。

(岐阜赤十字病院泌尿器科部長、ウロギネセンター長)