皮膚科医 清島真理子氏

 3月13日から新型コロナウイルス感染予防のためのマスク着用が個人の判断で行われるようになり、もうすぐ2カ月になります。

 私たちは3年以上にわたってマスクを着用してきました。その間にマスクによる肌トラブル(マスク皮膚炎)の患者さんが多数、皮膚科を受診されました。

 頬や口の周りなどマスクが当たる部分の肌トラブルは、コロナ禍の始まった2020年には前の年の20倍になったという統計もあります。その後も増加して21年は20年の1・6倍になったという調査もあります。ある化粧品メーカーのアンケート調査では成人女性の半数がマスクによる何らかの肌トラブルを感じているそうです。

 今も医療機関や高齢者施設、混雑した交通機関では多くの人がマスクを着用しており、また重症化のリスクの高い高齢者、基礎疾患のある人、妊婦さんでは着用が勧められています。そこで今回はマスク皮膚炎について話をしましょう。

 毎日長時間マスクを着けているといろいろな肌トラブルが起きます=表=。口の周りや頬、鼻、耳の後ろなどが赤くなったり、ぶつぶつができたり、かゆくなったりします。また唇がかさかさしたり、口内炎を起こしたりします。

 マスクには飛沫(ひまつ)防止効果の高い不織布がよく用いられます。繊維による刺激やかぶれを起こすことがあります。ウレタンや綿素材のマスクでも擦れたり刺激によってかゆくなったりすることがあります。マスクの素材を変えてみるとよいと思います。

 かぶれの治療で長い間ステロイドの塗り薬を使用していると、副作用で口の周りや頬が赤くなって酒さ様皮膚炎という状態になることがあります。症状がよくならない時は皮膚科に相談してください。

 長時間マスクを使用していると蒸れて皮膚がふやけてきたり、細菌感染を起こしたりすることもあります。このような場合はマスクの長時間着用を避ける、マスクを適宜交換するほか、マスクと肌の間に柔らかいガーゼなどの肌触りのよい布を入れてみるのもよい工夫だと思います。

 長時間密閉されていると毛穴がふさがりやすく、ニキビができたり、毛穴でニキビダニが増えて皮膚炎を起こしやすくなったりします。洗顔を正しく行うことが大切で、ごしごしこすらず、洗顔料を泡立てて汗や余分な皮脂を洗い流すようにしてみてください。また、ニキビやニキビダニに対する治療も必要です。

 唇や皮膚が荒れることもあります。マスクに覆われた皮膚は息で皮膚バリアーの働きが悪くなってかさかさすることがあります。リップクリームや保湿剤を塗るとよいでしょう。

 マスクを長時間着用していると口の中でカンジダなどが増加し口内炎を起こすことがあります。口の中を清潔に保つようにしましょう。

 マスクから解放される日まで上手にマスクと付き合いましょう。