LVRで総合Vを飾った岩永千明騎手(中央)、2位の中島良美騎手(左)、3位のミカエル・ミシェル騎手(NAR提供)

 大けがから復帰、女王の座に歓喜の涙―。「LVRレディスヴィクトリーラウンド2020」の最終決戦・名古屋ラウンドが12日行われ、佐賀の岩永千明騎手(37)が2着、4着にまとめて総合優勝を飾った。中島良美騎手(浦和)が2位、ミカエル・ミシェル騎手(川崎)は3位で表彰台へ。連覇を狙った木之前葵騎手(名古屋)は6位、笠松での期間限定騎乗で健闘した関本玲花騎手(岩手)は7位だった。

 LVRは今年で4回目を迎え、地方競馬の女性ジョッキーが集結。名古屋ラウンドは無観客レ-スとなったが、熱く華麗に手綱さばきを競い合った。南関東での短期騎手免許で来日中のミシェル騎手(フランス)を含めて7人が参戦。第1~3ラウンド(高知、佐賀、名古屋)の総合ポイント上位3人の女性騎手に、地方競馬全国協会(NAR)理事長賞が授与された。

名古屋ラウンド第1戦は、ミシェル騎手騎乗のメモリーディディが豪快に差し切った(名古屋競馬提供)

 名古屋ラウンド第1戦(10R)、ミシェル騎手が騎乗したメモリーディディ(牝6歳、塚田隆男厩舎)はここ3走、着外続きだったが、残り200メートルから豪脚を発揮し、鮮やかな差し切り勝ち。2着には岩永騎手の騎乗馬が粘り込んだ。第2戦(12R)は、加藤聡一騎手騎乗のフラッグインハート(牡4歳、今津博之厩舎)が勝ち、女性ジョッキーでは中島騎手が2着で最先着、岩永騎手が4着だった。

 期間限定騎乗中に笠松で4勝、名古屋で1勝を挙げた関本騎手。インターネット上でも人気のアイドル的存在で、この日も騎乗依頼が多く、計6レースに参戦。東海地区初Vを飾った地で「騎乗経験を生かしたい」と闘志。1Rでは、6番人気のロミロミ(セン馬6歳、井上哲厩舎)で逃げ切り勝ち。名古屋2勝目を飾って成長した姿を見せた。LVRでは騎乗馬に恵まれず、初戦が9番人気・ニュークラウンで7着、2戦目は7番人気・アップショウで8着に終わった。
 
 将来のJRA騎手を目指して、日本語のマスターにも励んでいるのはミシェル騎手。「美しすぎる騎手」と注目され、LVRへの電撃参戦で地方競馬を盛り上げ。名古屋初戦ではダンスインザダーク産駒馬に騎乗し、後方一気の爆発力を引き出した。無観客でなかったら、場内には大勢のファンが詰め掛け、ゴール前ではすごい歓声が上がったことだろう。

LVR名古屋ラウンドに出場し、腕を競い合った7人の女性ジョッキー(NAR提供)

 ウイナーズサークルでは、表彰式とファイナルセレモニーが行われた。女王の座を射止め、祝福を受けた岩永騎手。4年前、佐賀競馬場での落馬事故で重傷を負い、療養生活が長く続いた。昨年6月、3年3カ月ぶりにレース復帰し元気な姿を見せてくれた。各ジョッキーから拍手を受けた表彰台では涙があふれ、両手で目頭を押さえながら優勝の喜びに浸った。

 「LVRは特別なレースで、復帰して参加したいと思っていました。優勝できてすごくうれしいです。(勝利を挙げた)佐賀では、応援する皆さんの声がすごく聞こえて、頑張りました。LVRは女性ジョッキーにとって刺激あるレースなので、ずっと続けばなあと思っています。来年も頑張ります」

岩永騎手(右)の総合Vを祝福する関本玲花騎手(NAR提供)

 昨秋デビューし、初参戦した関本騎手。
 「中学生の時に(LVRを)盛岡で初めて生で見て、私も一緒に乗りたいなあと思いました。今回はすごくいい経験になりました。先輩たちと一緒に乗れて、自分の未熟で足りないところを見つけられて良かったです。どんどん成長して、次回は優勝できるよう頑張ります」

 同期の中島騎手は南関東で騎乗。けがのため高知ラウンドを欠場し、佐賀ラウンドからの参戦となった。
 「佐賀(2着、2着)と名古屋では結果を残せて良かったです。レースでは良い馬に乗せてもらって感謝したいです。初めてLVRに参加して、女性ジョッキーの皆さんと一緒に乗れたのは新鮮でした。次は2位とかじゃなくて優勝できるように頑張りたいです」

 宮下瞳騎手は、過去の大会で3位、2位、2位。あと一歩で女王の座を逃してきたが、今回は4位。
 「残念でしたが、皆さんから若いパワーをもらって、私も元気になります。今回はミシェル騎手が参加してくれたおかげで、高知や佐賀ではお客さんも多く、乗っている自分たちもうれしかったです。次回は(新人の)女性騎手が2人増えるようなので、(LVRも)女性だけでレースができて盛り上がると思うので、頑張っていきたいです」
 13日現在、女性騎手最多勝の841勝で、1万回騎乗まであと1回に迫っている。笠松の次回開催で騎乗機会があれば、1万回騎乗が達成できる。今年は名古屋リーディング3位を走り、笠松では5戦3勝で、勝利も期待できそうだ。

 前回優勝した木之前葵騎手はV2ならず。 
 「全然いいところを見せられなかった。(ばんえいエキシビションレースに参加した)帯広が一番楽しかったです(笑い)。来年は(過去2回優勝の)別府真衣騎手(高知)も復帰して9人になりそうなので、頑張ります」

昨年9月、YJS笠松ラウンドに参戦した浜尚美騎手(右)と、笠松実習に励んだ深澤杏花騎手候補生

 浜尚美騎手は佐賀ラウンドで1勝を挙げた。昨年9月にはヤングジョッキーズシリーズ(YJS)笠松ラウンドにも参戦してくれた。
 「他場で騎乗できて、すごく貴重な経験になりました。(地元の)高知ではいいところを見せられなかったので、自分の足りないところをもっと勉強して、次はいい結果を残したいです」

 名古屋初参戦で勝利を挙げたミシェル騎手。
 「皆さんと一緒に参加できて、本当に楽しかったです。結果には満足しています。もう前しか見ていないんで、次に向かって『レッツゴー』です。(豪快な差し切りVには)びっくりしましたし、勝つことができ、うれしかったです。皆さん素晴らしいジョッキーの集まりで、対戦できて楽しかったです。来年はもっとたくさんの女性ジョッキーと会えることを楽しみにしています」
 次回のLVR参戦については「メイビー、そうなるといいです」と笑顔だった。

 地方競馬全国協会は12日、調教師・騎手免許試験の新規合格者を発表。昨年7月から半年間、笠松競馬場での実習に励んだ深澤杏花候補生(18)が騎手免許試験に合格。笠松では20年ぶりの女性ジョッキー誕生となる。湯前良人厩舎に所属し、4月1日からの開催でデビュー予定だ。来年のLVRにも参戦することになる。調教師免許試験は、地方通算2783勝(13日現在)の東川公則騎手が合格した。いずれも4月1日付の免許となる。笠松競馬の次回開催は17~19日の3日間。年度末の最後のシリーズで無観客レースとなり、ファンにとっては東川公則騎手の騎乗を生観戦できないのはとても残念だ。インターネットのライブ中継などで応援したい。