小児科医 福富悌氏

 新型コロナウイルス感染症が流行し、世の中のIT化が急速に進みました。小学生からタブレットを持つようになり、プログラミング教育も始まりました。小学生が多くのソフトを使いこなしている様子を見かけることがあります。これは2、3歳の小さい頃からゲームに親しんできたため抵抗なく受け入れられたとも考えられます。

 ところが1歳に満たない子どもがスマホに触れているのも見かけることがあります。言葉も理解できない子どもにとって、スマホは良い影響を与えているかどうか疑問に感じることがあります。このことについて調べてみますと、メディアと子どもの発達について多くの研究がされていました。

 親が家事などで手を離せない時にテレビやビデオ・DVDを見せたり、静かにするようにとスマホやタブレットを与えたりする現状があります(電子ベビーシッターや電子おしゃぶりと称される)。つまり子育てのツールとして利用されているが、長時間になると親をはじめ養育者があやしたり一緒に遊んだりする双方向性の関わりを奪うことになり、愛着形成への悪影響も懸念されます。

 また、日常的な電子おしゃぶりとしての使用は、幼児期のしつけの機会を放棄することになり自制心の発達を妨げる可能性があります。2歳児の調査で、自制心に問題がある子どもはメディア接触が多いとの報告があります(佐藤和夫:ITの功罪、小児保健研究、2018、77(1):18-22)。また生後早期からビデオを数時間以上にわたって長時間視聴することで、言語発達が遅れたり対人交流が乏しくなったりすることがあります。発達的に生じる脳局所の灰白質減少と関連し、これらはメディア視聴そのものの影響や、親との情緒的な触れ合いの減少が影響していると考えられています。

 睡眠に対する影響の調査では、高照度の光を夜間に浴びることで入眠時間の遅延や中途覚醒が増え、睡眠時間の減少により昼間の眠気、慢性疲労感、学習能力の低下、さらにはいらいらや暴言などの情緒障害やうつ状態、興味・意欲の低下が見られています。また、1歳半のアンケート調査で「スマホやタブレットを使いたがる・取り上げると嫌がる」といった依存傾向を示すような子どもが存在することも明らかとなりました。

 単純にゲームを禁止すればよいわけではなく、使用ルールが重要です。日本小児科医会では「子どもとメディア」に関する五つの提言=表=を打ち出しています。私たちの生活の中でITは便利で、AI(人工知能)の進化とも相まって必要不可欠なものになってきました。そのため、子どもにとって負の影響がないように、大切なお子さんの発達を考えてメディアを取り入れましょう。