靴磨き職人は天職
「どんな時も命を削って磨け」。師匠の言葉を胸に刻み、靴磨きに向き合う日々だ。靴のケアを習慣化し、一生履き続けられるような文化にしたいと、店では1足の靴磨き料金を2千円台に設定し、学割も用意した。
完全予約制の対面スタイルは、顧客と話しながら靴を磨きたいためだ。「今はそれなりに発達障害をオープンにできる社会になったが、大人も企業もどのように接したらよいかわからない人は多いと思う。当事者しかわからないことはある。経験を伝えられたらいいなって。僕の役目です」。自身が発達障害であったり、子どもが発達障害で今後の生活を不安視したりする親から、相談を受けることは多い。「何かつかんでもらえることがあればいいな」。晴れた気持ちで帰ってもらいたいという願いを込め、市原さんは「靴磨きは心磨き」と表現している。
市原さんと同じ発達障害のある子どもを対象に靴磨き教室を開き、小学1年から高校1年の14人が通う。靴を磨く子もいれば、靴を触ったり、靴磨きに関係なく遊んだりする子もいる。「子どもの特性に気付いた親御さんもいました」。放課後デイサービスでは月1回、靴磨きを教えるボランティアを続ける。
障害者手帳2級を持ち、今も生活に薬は欠かせないが、発達障害と向き合い、集中力と記憶力を強みに自分自身の生きる道を見つけた。「つらいときもありました。なぜ、自分が発達障害なのかって。それでも諦めたら、それまで。お母さんに何とかなるよと言われたことが支えになった」。選んだ道に迷いはない。「好きなことができ、お客さんの笑顔を見られ、お金がもらえる。靴磨き職人は天職です」




