気付いた障害

 そんな生活が一変したのは高校3年の秋のある日。靴磨きを終え、自宅に帰ろうと名古屋駅前の横断歩道を渡っていると、突然ふらついた。「何かおかしい」。倒れ込み、救急車で搬送された。診察を受けたが、異常はなかった。翌日も靴磨きに向かおうとすると、手が震え、息苦しく、動悸が止まらない。高速バスに乗っていられず、途中で降りた。

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 精神科に足を運ぶと、ASD(自閉スペクトラム症)と診断された。

2歳の頃の市原レオンさんと母(市原さん提供)

 思い当たることはあった。学校でいじめに遭った。中学生の頃、つらいときは所属していた陸上部のスパイクと歯ブラシを持ち、休み時間や授業を抜け出して体育館の裏で磨いた。休み時間に同級生が騒ぐ音に耐えられなくなり、机を投げたり、ガラスを割ったりして暴れたこともあった。教師4人掛かりで取り押さえられた。暴れたことをまったく覚えていなかったが、教師から叱られ、事態を把握したという。

 「発達障害と診断され、心に広がっていたモヤモヤがすっきりと解消された。ほっとした。悩んでも仕方がないって」。「そうだったんだね」と納得した母とのリハビリが始まった。外出時間を少しずつ延ばすことを繰り返し、2年をかけて日常生活を取り戻した。

 靴磨きのために靴のデザインを学ぼうと、入学した専門学校にはリハビリ生活で通えず、1年間の休学後に退学した。「原点の路上の靴磨きに戻って、ゆっくり進もう」。再び、路上で無料の靴磨きを始めた。

 2017年のある寒い日。市原さんの歩む道を示してくれることになる一人の年老いた男性が、そばに立っていた。