【秋季岐阜県高校野球大会中濃・飛騨地区大会準決勝 帝京大可児3―1関商工】

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 3対1の2点差、九回表1死二、三塁。ピンチに帝京大可児・田口聖記監督がエース山田隆太に代わってマウンドに送ったのは、中学時代に142キロをマークした期待の1年生右腕富田櫂成。九回に継投した初戦の2回戦益田清風戦、先発した準々決勝斐太戦の2試合は思うような投球ができなかったが、自慢の直球で2者を飛球に打ち取り、決勝へといざなった。逸材に持ち味を発揮させたのは正捕手・近藤佑だが、その近藤を成長させたのは、あの一戦。今夏の岐阜大会準決勝の大垣日大戦だった。

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帝京大可児×関商工=抑えの1年富田(右)に声をかけ、力を引き出す捕手近藤=KYB

悪夢から学んだ教訓 「投げ切らせるリード」

 今夏から背番号2を背負う近藤。能力の高い豊富な投手陣をリードし、ノーシードからベスト4まで躍進させた。だが、準決勝の大垣日大戦。延長タイブレークの十回表、1死二、三塁で打席に迎えたのは、かぜによる体調不良で無安打だった主砲高橋慎。高橋との勝負は円陣でのナインの総意だが、初球に何を投げるかは近藤のリード。田口監督は「ボールも選択肢にある」と語ったが、選択したインコースの直球が甘くなり、2点二塁打。ここから一挙8点を失い、2年続けて、あとわずかで甲子園切符に届かなかった。

 「あの一球は忘れない。インコースの要求が、ここらへんというアバウトなものだった。ボールになってもいいので、厳しいインコースを要求すべきだった…」と近藤。準決勝敗退の大きな代償ともに近藤が得た教訓は「ピッチャーに思い切り投げ切らせるリード」。それが、新チームとなった地区大会準決勝、土壇場のピンチで生きた。

帝京大可児×関商工=九回のピンチに継投し、2者を討ち取った帝京大可児の富田=KYB

高い投手力の真価発揮の鍵握る〝扇の要〟

 「ここまで投げ抜いてくれた山田さんのためにも、抑えないと」と意気込む富田。「焦らせてはいけない場面」と近藤。間を取ることを最重要視し、2度、マウンドに向かった。そして語りかける。「ボールになってもいい。思い切り腕を振れ」。潜在能力が解放された富田。球速は130キロ中盤だったが、球威、切れともに抜群で、前打席適時打の3番土岐彩斗を詰まらせて左飛。続く4番林悠陽も一飛に仕留めた。

 「公式戦3試合目で、一番いい内容。力を込めれば140キロは超えるだろうが、7、8割の力で球がきていた」と逸材をたたえる田口監督。富田も「まっすぐを貫けた。でも、まだ70点。持ち味のストレートの球威と切れで、三振の取れる投手になる」と目を輝かせる。

 勝利とともに自身の成長を示した近藤。「打たれることは、すべてキャッチャーの責任。これからも〝投げ切らせる〟リードに徹する」と誓う。今チームも高い投手力を誇る帝京大可児。悲願の甲子園出場は〝扇の要〟近藤の双肩にかかる。

 森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。