粟屋忍(1987年)より改変
「こどもの目の日」啓発ポスター

眼科医 金田正博氏

 読者の皆さん、6月10日は何の日かご存じですか? ほとんどの方はご存じないと思います。今年から6月10日が「こどもの目の日」に制定されました。でもなぜ6月10日? それは「6歳までに1・0の視力を獲得してほしい」という眼科医の願いを込めた語呂合わせです。

 生まれたばかりの赤ちゃんはわずかしか目が見えませんが、成長につれて徐々に視力は発達します。視力の成長は10歳くらいまで続きます(これを感受性期と呼びます)が、それまでの期間に何らかの原因で視力の成長が止まってしまい、眼鏡をかけても正常な視力にならない状態を弱視と呼びます。裸眼視力(眼鏡なしの視力)がどんなに低くても、眼鏡をかけて1・0の視力があれば弱視ではありません。

 では弱視になる原因にはどんなものがあるのでしょう? 大きく分けて四つあります。

 ①屈折異常弱視=これは遠視、近視、乱視が両目とも強いために起きるものです。視力が発達するためには常にピントが合った状態で物を見る必要がありますが、ピントが合わない状態が続くと視力の発達が障害されます。最も代表的なのが遠視です。通常、近視は弱視にはなりにくいのですが、強度の近視では弱視になることもあります。

 ②不同視弱視=遠視、近視、乱視に左右差が強い場合に起きる片目の弱視です。片目の視力は正常なので、周囲の人からは分かりません。

 ③斜視弱視=斜視があるために起きる弱視です。

 ④形態覚遮断弱視=乳幼児期に視覚が遮断されることによって生じます。先天白内障、眼瞼(がんけん)腫瘍、角膜混濁、高度の眼瞼下垂などが原因になります。

 弱視は早期発見、早期治療で多くが治療可能です。ただし発見が遅れると治せなくなることもあります。最も重要なのは3歳児健診です。最近多くの自治体では、簡単に屈折異常を見つけることができる機器を使うようになりました。これによって以前に比べ弱視のお子さんを早期に見つけることができるようになりました。弱視の疑いと言われたら、必ず眼科医を受診してください。

 眼科では、調節麻痺(まひ)剤という目薬を使ってより詳しい屈折検査を行います。そして弱視になっているのか、その原因は何かを調べます。治療は弱視を来す屈折異常があれば治療用の眼鏡を処方し、不同視弱視の場合は良い方の目を遮蔽(しゃへい)して弱視の目で物を見る訓練をするアイパッチ治療などを行います。いったんよくなったからと治療を中断せず、眼科医の指示に従って治療を継続することが大切です。