【県岐阜商5―3岐阜 秋季岐阜県高校野球大会・第5日】

 一人500球のフリー、さらにセンターラインを引いての逆方向への打撃を100本。地区大会で岐阜から6安打しか打てなかった試合直後、県岐阜商打線に鍛治舎巧監督が課した特打。その後の二桁安打できない練習試合後も、同様に課してきた成果は着実に実りつつある。県大会初戦の岐阜戦は、得点こそ5にとどまったが、毎回の全員安打は合計14本。中でも四回に2死からクリーンアップが3連打した唯一の適時打による得点は、この試合のテーマ「ファーストストライクをとらえる」を実践した成長の証しの1点だ。

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県岐阜商×岐阜=4回裏県岐阜商2死一塁、加納が左前打を放つ=大垣北公園

ファーストストライクをとらえる 連日の特打の成果

 成長を示す絶好の相手、岐阜戦だが、立ち上がり、いきなりエース森厳徳が四球、中越え二塁打で先制を許す。「初回の失点で打線に流れを持ってこられなかった」と悔いる森だが、立ち直った二回、打線もファーストストライクをきっちり安打にし、反撃を開始する。先頭の主将日比野遼司が右前打、犠打後、大東要介が左前打で1死一、三塁。森が自ら右犠飛で同点とすると、地区大会後に1番定着の大野友也が左翼線二塁打を放つ。勝ち越しは死球押し出しだったが、安打はすべてファーストストライク。中でも大野友の二塁打は、敵将の北川英治監督が「左打者が逆方向へ打てるようになっているのは進歩」とたたえる成果だ。

県岐阜商×岐阜=4回裏県岐阜商2死一、二塁、寺前が左前適時打を放つ=大垣北公園

 さらに象徴が四回。2死後、3番垣津吏統が初球を左前打。続く4番加納朋季も1ボール後、左前打。3、4番の連打に燃えたのが5番寺前雄貴。1ボール後にきたスライダーを左前にはじき返し、わずか5球で3連打し、1点。寺前も「ファーストストライクが、張っていたスライダー。しっかり打てた」と笑顔で振り返った。

さらなる成長の階段を昇り続ける100年世代

 だが寺前は、続く第4打席は1死二、三塁から遊ゴロ、最終第5打席は2死から前打者の加納が内野安打で出塁したが右飛に終わった。「打とう打とうと力んで、空回りした」と猛省し「次戦に向けて、しっかり修正したい」と唇をかみしめる。さらに14安打しながらの5得点に主将の日比野も「ファーストストライクをしっかり捉え、14安打できたのはよかったが、チャンスで1本出なかった。この1週間で、一球に集中するよう全員で高めたい」と飛躍を誓う。

県岐阜商×岐阜=4回裏県岐阜商2死一、二塁、唯一のタイムリーの寺前の左前打で生還する二走垣津=大垣北公園

 この試合、失策数は1だが、「内野守備で細かいミスが多かった」と鍛治舎監督。学校に戻ってから4時間にわたって守備練習に明け暮れた。「納得するまでやろうと呼びかけた。選手らは疲れているだろうが、この積み重ねが必ず甲子園につながる」と指揮官が鬼となる日々は続く。結果として思うように顕在化できていない〝名門の100年世代〟だが、一歩ずつ、着実に成長の階段を上っているのは確かだ。

森嶋哲也(もりしま・てつや) 高校野球取材歴35年。昭和の終わりから平成、令和にわたって岐阜県高校野球の甲子園での日本一をテーマに、取材を続けている。