【岐阜第一8―4中京 秋季岐阜県大会準決勝】
「俺たち2年生が引っ張る」。岐阜第一好素材の1年生の中でも「うちの看板」と田所孝二監督が胸を張る投打の核・1年生バッテリーをけがで欠く危機的状況を救ったのは、代役の2年生捕手の4番阪口笙だった。同じく2年の先発左腕鑓水佑哉を好リードし、土壇場で勝ち越された直後の八回裏に逆転の右2点適時打。さらに阪口が固い約束を交わした2年の6番山口晄生が勝利を決定づける左翼越え3ラン。最高の盛り上がりで、3年連続秋県制覇を狙う中京を撃破し、13年ぶりの秋県決勝へと駆け上がった。
捕手復帰の阪口、2年左腕鑓水を好リード
4番捕手の永安弘和が接触プレーで左手を負傷したのは4回戦の東濃実戦。翌日の準々決勝市岐阜商戦から、今夏まで正捕手だった阪口がマスクをかぶった。さらにこの準々決勝でエース水野匠登が足を痛めて八回で降板。医師の診断は肉離れ手前の筋膜炎で、準決勝前日から投球練習を始めたが、大事を取って準決勝は先発を回避。「万が一負けても翌日に3位決定戦がある。無理はしない」の田所監督の決断が、2年生トリオの奮起を呼び、〝無欲の勝利〟につながった。
1点を争う緊迫した展開。新チーム発足後、一切マスクをかぶってなかった阪口だが、今秋の県大会初戦の2回戦で覚醒した鑓水を好リードし、7回2失点とゲームをつくる。「俺らで抑えるしかない」と言い続けて強気で攻めさせ、直球でカウントを整え、決め球のスライダーで的を絞らせない。鑓水も「面を広く構えてくれるので投げやすかった」と今夏までの女房役をたたえる。
再逆転された土壇場、2年コンビのバットが勝利いざなう
七回裏に3―2と勝ち越した直後の八回表、田所監督はエース水野をマウンドに送って逃げ切りを図るが、2点を奪われ、再逆転される。勝負の行方がわからないこの状況を阪口のバットが振り払う。その裏2死一、三塁。中京の抑え三浦暖都が決め球は直球と見て、「スライダーを狙い打て」との田所監督の指示を忠実に実行。初球の外角真ん中のスライダーを右翼へ2点打。田所監督も「これまで引っ張りたがっていた阪口が逆方向へきっちり打てたことは大きい」と成長をたたえる。敵失で一、二塁となった後、山口が3ランで阪口との誓いを果たす。
1年生ばかりが目立ってきた岐阜第一が、2年生の活躍で東海切符を決め、決勝へ駒を進めた意義は大きい。「次も自分たちが」と口をそろえる阪口たち。水野も「次はきっちり投げる」と誓う。1、2年がうまく融合し、高め合う岐阜第一。23年ぶり甲子園へ向けての今後の戦いから目が離せない。