従業員の健康管理を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営」が注目を集めています。岐阜新聞社では、岐阜県や岐阜労働局、岐阜県商工会議所連合会、全国健康保険協会(協会けんぽ)岐阜支部、アクサ生命保険などと協力して「ぎふ健康づくり応援プロジェクト~健康経営のすすめ~」を展開し、健康経営の魅力を広く発信しています。

 3月12日には、「ぎふ健康経営セミナー」を長良川国際会議場大会議室で開催しました。講演では、カゴメの管理栄養士である杉本優子さんが「野菜から始める食生活改善」をテーマに話し、取り組み事例の発表ではイビデン(大垣市)とツカダ(関市)が、自社の取り組みについて発表しました。

2024年4月23日掲載

【講演】野菜を意識した食生活の実践を

 「野菜に対して意識を変える、行動も変える」今日は野菜をテーマに話を進めます。健康が全てではありませんが、健康体であることはとても大事なことです。私たちカゴメは全国に在籍する管理栄養士によるチーム「野菜と生活 管理栄養士ラボ」を立ち上げ、野菜摂取の大切さ、健康の大切さを伝え行動変容を促す健康セミナーを開催しています。

 さて「メタボリックドミノ」という概念があることをご存じでしょうか。ドミノを倒さないためには自分がどういう状態かを把握し、健康管理の3つのポイント:適度な運動、十分な睡眠、良い食習慣を実践することが大事です。今回の講演では良い食習慣についてお話します。

 厚生労働省が定める1日に必要な野菜摂取目標量は350グラムです。健康維持に必要なビタミン、ミネラルなどは野菜から期待することができます。量だけではなく、食事する際の食べる順番も大事です。順番は「ベジタブルファースト」です。食事の最初に野菜を摂ることで血糖値のゆるやかな上昇と下降が期待されます。またベジタブルファーストは野菜100%の野菜ジュースでも同様の効果が得られることが実験から分かっています。

 自分で決意して野菜を意識して食べる生活を実践することを心掛けていきましょう。

手のひらをあてて野菜不足チェック

 当日は受付に手のひらから野菜摂取量を推定できる「ベジチェック」を設置して、会場に来場された皆様にベジチェックを体験いただきました。

 ベジチェックは皮膚に蓄積されたカロテノイド量を測定して野菜摂取レベル、推定野菜摂取量を表示する機器になります。野菜摂取レベルは0~12.0の120段階で表示され、レベル7~8が350gの野菜摂取量におおよそ相当します。推定野菜摂取量は6段階で表示されますので、推定野菜摂取量350gを目指して食生活を見直してみましょう。ベジチェックは食べたものがすぐに影響するわけではなく、2週間から4週間前の野菜摂取量を反映します。バランスの良い食生活を継続して再度ベジチェックを測定し、野菜を意識して食べる食生活を続けていただけると嬉しいです。

【事例発表①】イビデン株式会社 (大垣市・電子部品メーカー)
ウォーキングでコミュニケーション活発化

 当社は人事部、産業医や保健師が在籍する健康管理推進センターなどで構成する「衛生部会」を組織し、健康経営に取り組んでいます。全社的な活動が評価され、健康経営優良法人「ホワイト500」に8年連続で認定されています。

 衛生部会では、5ヵ年のヘルスプランを策定し、「運動習慣化率の向上」「喫煙率の低下」「腰痛予防」について重点的に取り組んでいます。具体的には年2回のウォーキングイベントや禁煙ラリーの実施、腰痛予防対策の啓発などを行っています。健康経営の推進には、レベル向上に向けたPDCAサイクルを回すことが大切です。中でも重要なのが、従業員の意見を聞く健康アンケートで、結果をもとに現状を分析し、企画の見直しや改善を行っています。

 生活習慣病予防のために、保健師から情報を毎月提供するほか、食生活や栄養関連の動画の配信、およびオンラインセミナーを年9回行っています。社員食堂では、食堂業者と連携してヘルシーメニューを提供しています。

 ウォーキングイベントは社長や役員も参加する恒例行事で、チームを組んで歩数を競います。2022年度は創立110周年記念として、大垣観光協会とのコラボ企画「謎解きウォーキング」を実施しました。ダイエット企画「ウエストサイズ物語」では、参加者が各自の目標を宣言し、近況を報告し合うことで仲間意識も芽生えます。

 毎年開催する運動会では、社員とその家族が参加しており、肌年齢や血管年齢、骨密度などの健康測定会も実施しています。その他に、シニア社員の体力作りとして、50歳以上を対象にした体力測定と、改善に向けたインストラクターの指導を行い、また女性の健康に関するイベントでは、乳がん模型の触診体験講座に男性従業員も参加するなどしています。

 「笑いながら、楽しみながら結果が健康なら、ヨシ!」楽しくコミュニケーションを図り、これからも取り組んでいきます。

【事例発表②】株式会社ツカダ (関市・プレス加工)
社員は家族、健康経営で健康意識が向上

 昨年6月に商工会議所とアクサ生命が実施したセミナーへ参加したことが、健康経営に取り組むきっかけとなりました。人数が足りないからと誘われて参加しましたが、それほど興味がありませんでした。健康経営実践企業の取り組みを聞いていくうちに、社長自らが社員の健康に積極的に関与していくことが大切だと痛感しました。

 健康経営の第一歩として、アクサ生命に相談し、従業員の健康意識を調査する「健康習慣アンケート」を実施しました。社員満足度の項目もありましたが、多くの従業員が満足と回答してくれ、ホッとしたことを覚えています。社長として、毎年少しでも社員満足度が上がるよう、健康経営に取り組むことを決意しました。

 健康経営を始めるまでは、従業員の健康状態を把握することに抵抗がありましたが、逆に無関心ではいけないと思うようになりました。18人の会社なのだから従業員とは家族のように接していこうと決め、今では従業員の健康診断の結果に目を通し、運動や食事を意識した生活を呼びかけています。

 具体的な取り組みとしては、当社はプレス工場なので大きな騒音の中で作業をします。推奨していた耳栓は、なかなか付けてもらえませんでした。そこで、スマホで音楽やラジオを聞きながら作業することを認め、ワイヤレスイヤホンの購入補助金を出すようにしました。社員専用のWi-Fi(ワイファイ)も導入しました。また、会社で購入した特定保健用食品(トクホ)飲料を冷蔵庫に常備し、1本100円で買えるようにしました。夏場には熱中症対策として「かき氷食べ放題」も行っています。社員からの提案も積極的に採用することにしています。

 社員に変化が表れたと感じたのは、朝礼の1分間スピーチです。それまでは自分の趣味や家族の話が大半でしたが、現在は健康に関する話題が増えています。これだけでも健康経営に取り組んだ成果といえます。
 


わたしたちは、ぎふ健康づくり応援プロジェクトに参画しています

●本プロジェクトにご賛同いただけるパートナー企業を募集します。パートナー企業には、健康経営などに関する情報提供や、特集内での健康経営の取り組み紹介などを予定しています。
●「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。