誰が何と言っても岐阜はみそかつ王国です! みそかつ絶対主義バンザイ!・・・と思っていたのですが、みそ以外で食べるとんかつ、岐阜には意外にあるのです。塩、ソースに続き、2回目の今回は元祖みそかつ店のデミグラスソースについて。取材すると「安くてお腹いっぱいに」という創業者の思いと、それを受け継ぐ3代目の思いが聞けました。

 「元祖みそかつの店 一楽」。柳ケ瀬の中の狭いカウンターが特徴で、岐阜のみそかつ元祖の店と言われています。

岐阜のみそかつ元祖とされている「一楽」=岐阜市弥生町

 創業は1957年。3代目の山口一徳さん(42)の祖父母の博さん、芳子さんが柳ケ瀬で開業しました。

 直前に営んでいた居酒屋で提供していたどて煮のみそ鍋に串かつが落ち、食べたら、おいしかったというのが原点だといいます。煮込んでも風味が飛ばない八丁みそとザラメで口当たりのいいみそだれ。創業以来、レシピもみそも変えず、継ぎ足して使っています。

創業以来継ぎ足しているみそ=一楽

 そんな岐阜の元祖みそかつ店のメニューにはある気になるものが。「ドビかつライス 900円」。デミグラスソースのとんかつ、と説明されています。デミグラスがなまってドビなんです。

自家製デミグラスソースのかかったドビかつライス=一楽

 みそかつ絶対主義者の筆者もよく一楽へみそかつを食べにいきますが、ずっと不思議でした。なぜみそかつのお店にデミグラスソースがあるのか?

 山口さんによると、当初は祖父の博さんが開業したころからメニューにあるオムライスのためだったそうです。いつしかかつにもかけるようになりました。

 では、なぜオムライスなのか?

 博さんは柳ケ瀬でバーや洋食屋で働いていました。洋食屋で働いていた経験から、みそかつに加え、オムライスもメニューに入れたといいます。今ではみそかつに加え、一楽の二大看板メニューです。

ボリュームたっぷりなオムライス=一楽

 このデミグラスソース、実は秘密があります。豚肉を使っているのです。普通は牛の骨付き肉などでだしを取りますが、一楽は仕込みなどで出た豚肉の余分な部位や筋を煮込んでデミグラスソースを作っています。

 食材を有効活用しているのです。

 一楽と言えば、安くてボリュームがあるのが特徴です。それを実現するためにコスト削減、食材の有効活用の工夫がデミグラスソースに結実しているのです。オムライスの肉も筋から取った豚肉です。

 30年ほど前に他界した博さんですが、山口さんによると厳しく、口数は少なかったそうですが、人情味があったといいます。

 「オムライスをメニューに入れたのも、学生さんや若い人に安くてお腹いっぱいになってほしかったから」だとか。オムライスは大盛りだとご飯4杯分、作るのも大変だそうですが、「おじいちゃんの思いを受け継ぎたい」と山口さん。今も高校生限定でご飯のおかわりは3杯まで無料などのサービスがあります。

 メニューには「みそ&ドビかつライス」(900円)もあります。元祖からしてとんかつの多様性があるのです。

「おじいちゃんの思いを受け継ぎたい」と話す山口一徳さん=一楽

 「岐阜はみそかつ王国、というよりとんかつ多様性の地やね」

 そう話すのは岐阜市の油問屋「山本佐太郎商店」の4代目、山本慎一郎さん(49)。年間300日以上外食をし、みそかつ/とんかつ屋など300店以上の飲食店と取り引きしています。

 「岐阜はみそかつのイメージが強いけど、とんかつの進化の過程においてソース、みそ、塩などで食べる選択肢が生まれたと思う」。

 進化とはどういうことでしょうか。...