もう疲れました。仕事に、毎日に、この暑さに。40代男、一人旅に出ようと思います。そんなとき、頼りになるのは「青春18きっぷ」。JR線の普通列車に一日乗り放題となります。1枚1万2050円で、5回分使えます。1回当たり2410円とお財布にも優しい上、利用に年齢制限はありません。岐阜駅から一日でどこまで行くことができるのでしょうか。日本の中心位置にある岐阜。どの方面でも行けます。岐阜県民ですから、非日常を求めるときは海を見に行きましょう。人が少なそうな日本海を目指します。

 

 翌日は仕事です。岐阜から日帰りで行ける最も遠い場所はどこか。時刻表をめくって検討しました。調べていくうちに目的地が浮かんできました。

 兵庫県美方郡香美(かみ)町、JR山陰本線、香住(かすみ)駅。
 
 日本海に面した港町のようです。海水浴場があり、冬はカニが獲れます。カニ。元岐阜新聞可児支局長としては見逃せません。季節は違いますが、うまくいけば本場のカニが食べられるかもしれません。行き先は決まりました。日帰り往復で計約17時間、600キロの旅の始まりです。

 7月22日、月曜日午前6時の岐阜駅。早朝から通勤の人が目立ちます。この日はたまたま東海道新幹線が保守用車同士の事故で始発から運転を見合わせましたが、岐阜駅はこの時点ではそこまでの影響は見当たりませんでした。なおさら、私は西への旅人。20日からの青春18きっぷシーズンに入った直後で、観光客風の人も見られます。

 岐阜駅4番線から6時5分発の大垣行きに乗り込みます。東海道線下りの始発電車。名古屋から来た列車は313系の4両編成です。いつも乗る普通の通勤電車です。日常から非日常への旅立ちの第一歩としては最高です。

岐阜・名古屋地区の東海道線の313系(資料写真)

 大垣で米原行きに乗り換えます。6時17分に1番線に到着した列車から、階段を上り下りして2番線に止まっている6時20分発の列車へ乗り込みます。大勢の人が、足早に階段を上がります。

琵琶湖線の新快速電車(資料写真)

 米原には35分後の6時55分に到着。着いたホームの向かい側に、次に乗る電車が止まっていました。米原7時0分の新快速姫路行き。ここからはJR西日本エリア。車両の顔ぶれも、オレンジ帯の313系から青や茶の帯が入っている223系や225系に一変。非日常の世界に一歩踏み入れました。12両編成の列車が、朝ラッシュ時間帯の琵琶湖南岸を駆け抜けていきます。京都に近づくにつれ車内は混雑していきます。

 京都には約1時間後の8時6分に到着。山陰線(嵯峨野線)ホームへと向かいます。朝ラッシュの京都駅。通勤通学だけでなく、大きなスーツケースを引っ張るインバウンド(訪日客)も目立ちます。

山陰線(嵯峨野線)の電車。阪和線から転用された223系=園部駅

 京都8時16分発の園部行き普通電車は8両編成でした。改札や階段に近いところは混雑していますが、先頭の方は比較的余裕がありました。

 山陰線(嵯峨野線)は、コロナ禍で余った各線の車両をかき集めた形です。前の4両は、阪和線・関西空港線から転用した223系でした。車体の帯色だけでなく、1人掛けと2人掛けの転換クロスシートで車内の通路幅が広いのが特徴。結果的に、インバウンド(訪日客)であふれかえる山陰線(嵯峨野線)にもってこいの車両となりました。

 山陰線(嵯峨野線)の京都市内の区間は複線ですが、京都駅の手前で単線となっています。対向列車の遅れで、5分ほど遅れての発車となりました。市街地を抜けると車内にも余裕が出てきました。嵯峨嵐山を出ると、山間部になります。長大トンネルの連続で抜けていきます。

 50分ほどかけて園部に到着。同駅9時46分発の豊岡行きに乗り換えます。園部では40分ほど待ち時間。終点の豊岡に着くのは12時19分の予定。2時間半ほど乗ることになります。2時間半あれば、岐阜羽島から東京まで新幹線で楽に行けます。無駄な時間のかけ方です。タイパ最悪で、最高です。
 
 2両編成のワンマン列車。車内は転換クロスシート。ここまで、すべての列車が転換クロスシート。JR東海&西日本ならではの現象です。最初はやや混んでいましたが、学生が降りていくと車内が空いていきます。土地勘のないところで人の流れが見えるのも、普通列車の旅の楽しみの一つです。

園部から豊岡まで乗車した電車。入れ替え中=園部駅

 園部からは山が続き、駅近くに集落が広がるという風景が続きます。綾部(京都府綾部市)からは盆地。平坦な地形になります。

 高架橋を上がると、福知山(京都府福知山市)に到着します。隣のホームに大阪からの特急「こうのとり」3号。「しらさぎ」から転用した車両でした。...