裁判所前の取材エリアに場所取りのため張られた「法廷線」のロゴが入った紙=2024年12月、香港(共同)

 香港社会を大きく変質させた香港国家安全維持法(国安法)施行から6月末で5年。中国の統制強化により言論の自由がほぼ失われた香港で、摘発された民主派の公判を傍聴して報道する「法廷記者」が奮闘している。司法ニュースに特化して中立的な「記録者」に徹し、国安法公判の詳細を世に発信している。

 トレードマークの丸刈り頭にジャケット姿。国安法違反罪などに問われた香港紙、蘋果日報(リンゴ日報=廃刊)創業者、黎智英氏の昨年12月の被告人質問。裁判所周辺では多くの警官が“不審者”に目を光らせる。

 罪を真っ向から否認する黎氏の公判審理は今年5月現在で140日を超えた。その全てを傍聴し、報道するのがインターネットメディア「法廷線」だ。

 「公判での発言は『時代の記録』。やりとりをありのまま記し、特定の被告に肩入れすることはしない」。法廷線の共同創業者、陳婉テイさん(40)と陳信熙さん(36)は「裁判を評価するのは読者だ」と口々に語る。公開審理の司法ニュースなら「報道を続けられる」と、22年5月に法廷線を設立した。