学校法人の上野学園(東京都台東区)が、書籍やウェブ上の記事で名誉を毀損されたとして、記者と出版社の筑摩書房、文芸春秋に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は19日、記事は真実と認められないとして、記事の該当箇所削除と計88万円の支払いを命じた。
判決によると、筑摩書房は2023年2月、記者が執筆した大学のガバナンスに関する書籍を出版。その中で、上野学園の創業家出身の前理事長が、学園の財産を必要な手続きを経ず売却したと記載した。文芸春秋は翌月、上野学園に関する部分を抜粋した記事を、同社が運営する「文春オンライン」に掲載した。
衣斐瑞穂裁判長は、記者が確実な資料を確認せず、学園側への取材もしていなかったと指摘。記事の内容を事実と認める証拠はなく「真実と信じる相当の理由があったとも認められない」と判断した。
上野学園は「主張が正当だったことが認められた」とコメントした。
筑摩書房は取材に「判決を精査した上で今後の対応を考える」と回答。文芸春秋は「判決に不服があり、控訴する予定」とした。