中高年で発症するうつ病などの気分障害に、認知症の原因とされる物質が関わっている可能性があることが分かったと、量子科学技術研究開発機構(QST)と慶応大などのチームが9日、発表した。近年の研究で、中高年以降に発症する気分障害の一部が認知症の前兆として現れる可能性が指摘されているが、詳しい発症メカニズムは分かっていなかった。
チームは、認知症の早期診断や治療につながると期待している。
40歳以上でうつ病や双極性障害(そううつ病)を発症した患者52人と、同年代の健常者47人を対象に、陽電子放射断層撮影(PET)を実施。アルツハイマー病などの原因とされるタウやアミロイドベータというタンパク質が脳内に蓄積しているかどうかを調べた。
その結果、タウの蓄積が見られたのは健常者で約15%だったのに対し、気分障害の患者では50%に上った。幻覚や妄想といった精神症状を伴う重症の患者では蓄積量が多い傾向があった。アミロイドベータの蓄積も、患者の方が多く見られた。