政府は2030年代に核融合発電を実現するための工程表を本年度中に作成する。核融合炉に必須の部材開発といった技術的な目標と、立地選定手続きなど制度整備の時期を盛り込む。中長期の見通しを示し、投資や人材育成を促す狙いだ。

 今月4日に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定し、工程表の作成方針を明記した。発電目標は以前の「50年ごろ」から10年以上早められ、スケジュールを圧迫している。投入したエネルギーに見合わない電気しかつくれない段階で「夢のエネルギーを実証」などと誇大宣伝される恐れもあり、用語の定義を明確にする。

 核融合は、軽い原子核同士が融合する際に膨大なエネルギーが生じる現象。このエネルギーを熱に変えて発電に利用しようと、欧米でも国家戦略の策定や投資が進む。

 技術的には発展途上で、核融合で発生した中性子を受け止めて熱に変換する炉の内壁部材「ブランケット」の開発や、炉内の反応を遠隔管理し、放射線被ばくのリスクを低減する技術の確立など多くの課題が残されている。