オーストラリア政府は12日、日本の研究機関が保管していた先住民の遺骨10体が先住民と政府に返還されたと発表した。東京大が7体、京都大が2体、国立科学博物館が1体で、日本からの返還は初めてという。11日に東京の在日オーストラリア大使館で返還式典を開いた。

 文部科学省によると、要請を受けて日本国内での遺骨保管に関する調査を実施し、10体の存在が明らかになった。遺骨は海外の研究者を経由して入手されたとみられる。

 オーストラリア政府などによると、先住民の遺骨や遺品は植民地支配を受けた18世紀後半以降、埋葬や儀礼の場などから世界中に持ち去られた。医学や文化の研究にも利用されたが、先住民よりも欧州の人々が優れていると示し、植民地支配を正当化する意図があったとされる。収集家が入手してコレクション品として売買され、多くの人の手を渡って最終的に博物館に収蔵された例もある。

 1980年代、先住民の指導者が地元の大学から遺骨を取り戻す訴訟に勝訴。90年代には先住民運動が活発化し、英国の大学などからの返還も進んだ。