【ウィーン共同】国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は16日の特別理事会での報告で、イランとイスラエルの交戦激化は「人々と環境に深刻な影響を及ぼす放射性物質拡散の可能性を高める」と述べ、懸念を示した。イランが核兵器を保有しないための外交解決を遅らすとも指摘し、関係国に最大限の自制を求めた。

 グロッシ氏によると、13日のイスラエルによる空爆で地上施設や電気関連設備が破壊されたイラン中部ナタンズのウラン濃縮施設に、追加の被害はない。施設内の放射性物質や化学物質による汚染は適切な防護措置で対処可能だとした。

 中部フォルドゥのウラン濃縮施設とイスファハンの核関連施設も攻撃を受けたが、施設の外部ではいずれも放射線量に変化はないという。グロッシ氏は「IAEAが傍観者でいることはない」と強調、早期のイラン訪問への意欲を改めて示した。

 イランは特別理事会での声明で、米国は「イスラエルによる侵略が迫っていることを完全に認識していた」と指摘。理事会はイスラエルを「最も強い言葉で非難しなければならない」と主張した。