青森県むつ市のむつ総合病院

 「妊娠中に長時間運転するのは心配だった」。本州最北端の青森県・下北半島にある大間町に住む20代女性は振り返る。町内に産科がある病院はなく、健診のために隣のむつ市まで1時間かけて自ら運転して通った。

 2歳と1歳になる娘を出産したのは、むつ総合病院。下北地域の5市町村で唯一お産ができる公立病院だ。

 産科婦人科の医師は弘前大病院(同県弘前市)から派遣されている。分娩数は減少傾向で常勤医は年々削減され、現在は3人で担当。妊婦健診など、外来診療は完全予約制で対応している。

 むつ総合病院には低体重児や医療的ケア児などに対応した新生児集中治療室(NICU)などの設備はそろっていない。早産など不測の事態があれば、100〜150キロ離れた青森市や弘前市などの大病院に搬送される。大雪の影響でドクターヘリが飛ばず、救急車で2時間半以上かけて運ぶ場合も。

 政府は、医療機関の維持が困難な区域で働く医師の手当増額といった対策を打ち出すが、「具体的な偏在対策までは手が回っていない」(県の担当者)のが現状だ。