中国の軍事活動を巡る石破首相の発言

 石破茂首相は4日に那覇市で行った参院選演説で、中国の軍事活動に触れ「航空母艦を3隻就役させ、大変な勢いでこの地域に力を伸ばしている」と述べた。6日の横浜市での演説では「中国はものすごい勢いで軍拡を進め、台湾のあたりに航空母艦を配置している」と指摘した。ただ、公表された中国側資料では空母3隻の就役や台湾周辺への配置は確認できておらず、実態と齟齬がある。

 日本を取り巻く安全保障環境が悪化し、政府の取り組みをアピールする中での言及だが、不正確な発言と言えそうだ。

 中国の新型空母「福建」は2022年6月に上海で初めて進水、試験航行を実施している段階だ。今年6月時点で国営メディアも福建の就役が近いことを示唆するにとどまっている。

 中国軍が現在運用する空母「遼寧」「山東」も、台湾方面を管轄する東部戦区には配備されていない。首相の発言は台湾周辺での軍事演習における空母運用を念頭に置いている可能性があるが、「配置」という表現は正確ではない。

 一方、首相が言及した中国の軍拡は、中国側データで裏付けが可能だ。