東京・市谷の防衛省=24日

 自衛隊と米軍が昨年実施した「台湾有事」想定の最高レベルの机上演習で、中国が核兵器の使用を示唆する発言をしたとの設定に、自衛隊が米軍に「核の脅し」で対抗するよう再三求めたことが27日、複数の政府関係者への取材で分かった。米側は最終的に応じた。日米の外務・防衛当局だけでなく、制服組も核が使われる可能性を念頭に置いていることが判明した。日米共同統合演習で中国による核の脅しをシナリオに組み込んだのは初めて。

 米軍の行為は、同盟国への攻撃に対し、核兵器などで報復する意思を示して敵国に軍事行動を思いとどまらせる概念「拡大抑止」に基づく。唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴える日本が、有事には核による威嚇もいとわず、米中の緊張激化を助長させる恐れがあることが明らかになった。

 防衛省に事実確認を求めたが回答はなかった。

 演習はコンピューターを使うシミュレーション「キーン・エッジ」で、昨年2月にあった。仮想敵国を初めて中国と明示し、シナリオは事前に日米の限られた担当者が作成した。