少子化や大学入試改革で今、高校を取り巻く環境は大きく変化しています。岐阜県内の高校はどう対応していこうとしているのでしょうか。岐阜新聞デジタルは各校の校長らトップにインタビュー。今回は山県高校の杉山晴美校長(55)に取材しました。普通科でありながら商業、工業、福祉が学べるユニークな学校です。山県市唯一の高校は地域との協議の結果、そんな多様な学びができる高校になりました。杉山校長は「生徒数は少ないが、生徒や地域にとって存在意義は非常にある」と強調します。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

山県高校=山県市中洞
 山県高校 所在地は山県市中洞の県立全日制普通科単位制高校。本年度の定員は105人。愛称は「やまこう」。

 ―山県高校の特徴は

 大きく分けて二つある。

 一つは普通科高校でありながら、2年次から四つの類型(普通、商業、工業、福祉)に分かれ、より自分が興味を持てるコースを選ぶことができる。そして、その学びを進路選択に生かすことができる。

 もう一つは、学校が生徒の居場所となって、生徒が安心して他者との関係を築くことができるよう工夫していることだ。特に入学したばかりの1年次生は2人担任制にし、生徒に寄り添った対応ができるよう心がけている。

 本年度実施された生徒への調査結果によると、「学校内に悩みを相談できる先生がいる」と答えた1年次生が、全国平均では25%のところ、本校では実に75%となった。2、3年次生も同様の傾向だ。

 ―「学校に悩みを相談できる先生がいる」の割合が75%、この数字をどう捉えるか。

 確かに75%は高い数字だ。ただ、実際に相談したことがある生徒が75%というよりは、「いざとなったら相談できる」ということだと思う。本校の生徒にとって、SOSを出せる相手として教職員がいるということだと思う。

 ―学校全体で生徒への接し方を工夫しているのか。

 このような生徒と教職員の関係性は、本校が7年前に発達支持的生徒指導に大きく舵を切ったことによるものだ。生徒の自己効力感、他者理解、思いやり、人間関係形成力、協働力などの社会的資質・能力を高めるためには、まずは生徒との関係づくりが何より大切であると考え、教職員は日々、生徒に声をかけ、対話をすることに意識的に取り組んできた。その結果として、今では生徒が教職員に対して身構えることなく、いざとなれば相談できるという安心感を生み出したのだと思う。

 
 すぎやま・はるみ 山県市出身。教科は英語。加納高校教頭、県教委教育管理課地域管理監などを経て2025年度から現職。

 7年前、先陣を切って取り組んだ当時の生徒指導主事は、「生徒が社会に出る前に、愛情をいっぱい感じられる場所にしたかった」「信じられる大人がいることを実感してほしかった」と言っている。それが、現在の山県高校だ。

 ―普通科の4類型について詳しく。

 平成28年に、地域連携による活力ある高校づくりを話し合うための「山高MIRAI(未来)プロジェクト」が設置された。それ以降、...