少子化や大学入試改革で今、高校を取り巻く環境は大きく変化しています。岐阜県内の高校はどう対応していこうとしているのでしょうか。岐阜新聞デジタルは各校の校長らトップにインタビュー。学習方針や進路対策、キャリア教育について考えを聞きました。本年度3校目は羽島北高校(岐阜市)を特集。生徒の8割が四大に合格、昨年度は国公立大学に8人(既卒生含む)が合格した進学校ですが、蒲尚胤校長(58)は本年度大きく舵を切りました。「生徒の可能性を伸ばしたい」と質を重視した進学志向を目指すことにしたのです。試行錯誤を重ねた末の決断だったといいます。(岐阜新聞デジタル独自記事です)

羽島北高校
 羽島北高校 所在地は岐阜市柳津町北塚。1978年創立、全日制・普通科単位制の県立高校。1学年の定員は240人。愛称は「ハキタ」。

 ―羽島北高校の特徴は。

 本校はかつて、方向性を見失っていた時期があった。大学進学を目指す学校ではあるが、現場の先生方は生徒に対して「もったいない」という思いを抱いていた。もっと伸びるはず、高い潜在能力がある、なのに、あえて挑戦を避けている生徒が多いように感じていた。

 そこで2023年度から検討したのが、金曜日の5、6時間目をカリキュラム上、放課後にして、探究活動、部活動、教科補習の三つから生徒が時間を選ぶというアイデアだった。

 生徒が推薦入試を受けるときに勝負できる体験や学習を得られるようにするのが狙いだった。23年度の職員会議で議論し、24年度にはすべての先生方一人ひとりと熱く意見交換した。

 授業時間の確保、教員の指導体制など課題と不安材料が多くあり、結局、このアイデアの採用は見送った。

 ―どうなったのか。

 これが転機となった。課題が明確に見えた。先生たちはみな本校の生徒のポテンシャルに期待していた。可能性のある生徒がいくらでもいるのに、伸ばしきれないまま推薦入試などで大学に進学していく。

 2022年度、23年度の国公立大学の現役合格者はそれぞれ2人。もっと多くてもおかしくない。それだけのポテンシャルが生徒たちにはある。それで舵を切った。

 ―どのように。

 新1年生からカリキュラムを進化させた。志望先に応じたコース制を再編し、より柔軟で分かりやすくした。

 先生たちの業務も整理した。かつては時間割を個別に立て、細分化していたが、生徒を伸ばすシンプルでスリムな体制に変えた。

 
 かま・なおつぐ 岐阜市出身。教科は国語。岐山、大垣北教頭、羽島北教頭、関商工副校長などを経て2024年度から現職。岐山などで硬式野球部監督・部長。

 ―進学強化に舵を切ったのか。

 単に進学強化する、というのなら、土曜講座や毎日の平日補習もやらないといけない。しかし、それらを導入すると本校の生徒たちのいいところをつぶしていくのではないかと懸念した。先生方の働き方改革にも逆行する。土曜講座を受けるか部活をやるか、と生徒も悩ませる。以前赴任していた高校で土曜講座を開講していたが、やはり迷う生徒がいた。なんとかならないか、と思っていたので、土曜講座や平日補習には着手しない。

 ではどうしているか、というと授業勝負だ。...