新薬が痛みを抑えるメカニズム(イメージ)

 激しい痛みを伴うがん患者の苦痛緩和などに使え、依存性がない新たな鎮痛薬を開発したと、京都大の萩原正敏特任教授(創薬医学)らのチームが5日、発表した。マウスの実験でモルヒネと同等の効果を確認、肺がん患者での臨床試験(治験)でも痛みを抑える傾向がみられたという。

 現在使われている医療用麻薬のオピオイドは、国内では、非常に激しい痛みの「がん性疼痛」などに使われる。ただ依存性や副作用が課題だった。海外ではオピオイドの一種フェンタニルの過剰摂取が問題になっており、オピオイドに代わる薬になると期待できるとしている。

 チームは、人間が生命に危機が及ぶような状況になると、神経伝達物質のノルアドレナリンが分泌されて痛みを抑えることに着目した。ノルアドレナリンはα2A受容体と結合、受容体が活性化して鎮痛効果が生まれる。一方で結合後は分泌が減るため効果も薄れる。

 そこで、複数あるα2受容体のうち、鎮痛には関係ない種類のみをブロックして結合を阻害し、ノルアドレナリンを増やそうと考案。既存の化合物を調べ、ブロックできる新薬候補を発見した。