人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)などを培養して、脳組織の一部を再現した「脳オルガノイド」に注目が集まっている。脳の複雑な機能解明へ活用が期待され、大阪・関西万博では脳オルガノイドを電極チップにつなぎ活動を見せる展示が人気を博した。一方で専門家からは研究の進展を踏まえ「倫理的な配慮や、法的な議論が必要だ」との声も上がる。
池内与志穂・東京大教授(分子細胞工学)の研究室は、認知や思考など高度な機能をつかさどる大脳皮質に着目し、0・3〜0・4ミリのオルガノイドを作製した。縦2ミリ、横4ミリのチップ内にオルガノイド18個を並べ、2万6400個の電極を装着。神経が発する電気信号を記録し、どのような場合に活発になるのかなどを調べた。
チップに置かれたオルガノイド同士はシリコーンラバー製のトンネルを伝い、神経の突起「軸索」を伸ばして自発的に連結する。実際の脳の一部と同じような構造が再現されたという。
スイス企業がチップ開発を担った縁で、万博では同国館で展示された。