沈着したアミロイドベータに取り込まれるリチウム

 認知症で最も多い「アルツハイマー病」のような状態になりやすいマウスに、金属の一種「リチウム」を飲ませると認知機能の低下が抑えられることが分かったと、米ハーバード大などのチームが17日までに英科学誌ネイチャーに発表した。脳内のリチウムが不足すると記憶力が低下することも確認。新しい治療法の開発につながる可能性がある。

 リチウムは現在、双極性障害(そううつ病)の治療薬として「炭酸リチウム」が使われている。ただ吐き気や腎機能障害などの中毒症状が出ることもある。

 チームは、亡くなった人の脳で27種類の金属の量を分析。リチウムだけが、アルツハイマー病と、その前段階の軽度認知障害(MCI)の人の両方で、認知機能に問題のない人より減っていた。

 脳を詳しく調べると、アルツハイマー病の原因とされるタンパク質「アミロイドベータ」が沈着した部分にリチウムが取り込まれ、周囲の部分のリチウムが少なくなっていた。

 マウスにリチウムを減らした餌を与えると、認知機能が低下、アミロイドベータ沈着も進んだ。リチウムを加えた水を飲ませると、アミロイドベータの沈着や記憶力の低下が抑えられた。