人工多能性幹細胞(iPS細胞)からつくった網膜の細胞を重い目の病気の患者に移植する治療の計画を巡り、厚生労働省の先進医療技術審査部会は21日、保険診療と自由診療を併用できる先進医療での実施を「不適」とする評価をまとめた。この計画では、患者が治療効果を実感できたかどうかを判断できないなどと指摘した。
神戸市立神戸アイセンター病院の計画を厚労省が今年1月に受理。先進医療に認められれば、iPS細胞を使った治療として初だった。今後、厚労省の別の専門部会「再生医療等評価部会」で対応を議論する見通し。
計画では、光を感知する機能の維持に関わる「網膜色素上皮細胞」を健康な人のiPS細胞から作製。細胞の塊をひも状に加工し「網膜色素上皮不全症」の成人患者15人に移植するとしていた。
今回は計画の内容や実施体制を審査。治療効果は、視力や視野ではなく、網膜の異常が小さくなったかどうかで判定する計画で、実感できる症状の改善度合いを判断できないとした。また1千万円超とされた患者の費用負担額に関する説明が不十分だとした。