秋の訪れを告げる富山市八尾町の伝統行事「おわら風の盆」の踊り手らをかたどった布製の人形が人気を集めている。地元のそうけ島靖子さん(87)が洋裁店での経験を生かした、温かみのある風合いが魅力。編みがさを目深にかぶり、法被や浴衣を着た男女が三味線や胡弓の音色に合わせて踊り歩く様子を丁寧に再現している。
そうけ島さんが人形を作り始めたのは約10年前。和紙や焼き物で踊り手をかたどった人形はあったが、布製はなかった。営んでいた洋裁店で、着物を洋服や帽子などに仕立て直していた経験を生かそうと製作を思い立った。
人形の顔や編みがさ、着物、三味線や胡弓をちりめんや糸で作る。土台の紙粘土が固まったら、それらを貼り合わせる。「工程が多くて、作業も細かいから大変なの」とそうけ島さんは苦笑する。
毎年、祭りの期間の9月1〜3日の間で約400体を販売しているが、すぐに完売する。1体1800円で、八尾町のそうけ島さんの自宅前でのみ購入できる。そうけ島さんは「人形を見て、情景を思い出し、余韻に浸ってもらえたら」と話す。