下宿義円地蔵保存会の(左から)河村千鶴子さんと大野幸子さん、自治会長の河合裕満さん=大垣市墨俣町下宿、義円地蔵堂
義円の墓と伝わる五輪塔

 劇作家の三谷幸喜さんが脚本を手掛ける、今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。第11話(20日放送)で、現在の岐阜県大垣市墨俣町付近が舞台になった源平合戦「墨俣川の戦い」が描かれた。この合戦で源頼朝の弟・義円(ぎえん)が討ち死にしたが、実は同町には今でも“義円の墓”があり、地元の人たちが「義円さん」と呼んで先祖代々、毎月の月命日の供養を続けている。

 義円は、頼朝の異母弟で源義経の同母兄の僧侶。ドラマでは平家打倒で頼朝が挙兵すると、兄を支えようと京から参陣。ところが義経にそそのかされて叔父の源行家(ゆきいえ)と出陣し、平家軍に大敗。川で討ち死にする場面が描かれた。これが墨俣川の戦いだった。

 合戦は1181年3月10日、現在の長良川を挟んで繰り広げられた。その描写は中世の軍記物語「源平盛衰記」に詳しい。義円は、合戦で行家に先陣を切られてはならないと、前夜のうちに川を渡って1騎で対岸に潜んでいたが、平家の夜警兵に見つかって討ち取られたとされる。

 その義円のものと伝わる墓が、同町にある。訪れると「源義円の墓」と記された案内板の先に、石の五輪塔があった。畑に囲まれるようにしてあり、風化して丸みを帯びている。近くに義円公園という名の一画があり、義円の供養塔や義円地蔵、古戦場の石碑、由来をつづった説明板がある。

 地元の字名を冠した「下宿義円地蔵保存会」があるというので、地元の自治会長河合裕満さん(75)に紹介してもらった。この地区では、義円地蔵が安置されている地蔵堂で毎月10日の月命日に保存会がご詠歌をうたい、義円を供養しているという。

 地蔵堂の隣の観音堂も含めて月2回、地区の女性だけで先祖代々世話をしてきたが、今は保存会の女性は80代以上の4人のみ。健康上の理由もあり、最近は河村千鶴子さん(84)と大野幸子さん(83)の実質2人で担っている。若い人たちは仕事で忙しく地域のことまで手が回らず、河合さんは「高齢化が課題になっている」と漏らす。

 古くから「義円さん」と呼び「合戦で亡くなったと聞いていた」が、僧侶だったことはドラマで初めて知ったという河合さんら。人物像は詳しく分からずとも地域に根付いた風習を「絶やさず、義円さんのためにも守っていければ」と話していた。