岐阜市のご当地グルメ「天ぷら中華」
市役所の大食堂で提供を開始した=岐阜市

 岐阜市の隠れたB級グルメ「天ぷら中華」。中華そばにえび天をのせた料理で、近年提供する飲食店が減少していたが、市内の愛好家が要望したことで3月から市役所大食堂のメニューに加わった。現在、注文数は好調で大食堂マネジャーの明石健さん(37)は「メニュー化をきっかけに注目され、岐阜が元気になってほしい」と期待を寄せる。

 

 天ぷら中華は、中華そばに天ぷら用のえび天を入れた料理で、衣がスープに溶けることで、深い味わいが出る。大正~昭和初期にかけ、庶民がささやかなぜいたくとして、中華そばにえび天をトッピングするように注文したことで、誕生したとされる。多くは天ぷらを扱う店が、中華そば食堂に提供する形で出されていたという。

 近年はコロナ禍のため、天ぷらと中華そばを扱う店で、いずれも閉店が相次ぎ、現在、天ぷら中華を提供できる店は市内で10店舗程度まで減少している。

 市民のご当地グルメの危機に、市内の愛好家団体「天ぷら中華人民共和国」のメンバーが立ち上がった。2014年に結成した団体はこれまで食べ歩きツアーなどを実施してきたが、2年前の新型コロナウイルス感染拡大以降は見合わせていた。

 団体は、昨年5月に開庁した市役所新庁舎の大食堂に着目。岐阜らしい食事を提供し、大勢の来店客が訪れる大食堂に同10月、天ぷら中華のメニュー化を依頼した。メンバーで、油問屋「山本佐太郎商店」(同市松屋町)の代表、山本慎一郎さん(46)は「このまま天ぷら中華がなくなってしまうのは寂しかった」と振り返る。

 大食堂の明石さんは名古屋市出身で、依頼が来るまで天ぷら中華を口にしたことがなかったが、山本さんらの熱意に心を打たれた。地域貢献の思いもあり、3月からメニュー化した。明石さんは「岐阜の食文化を残そうとする人たちに心を動かされた。地域を元気にする活動の一助になりたい」と語る。現在、1日15食近い注文があり、評判は良いという。

 天ぷら中華が注目されていることに、長年絶やさずに提供してきた食堂からも喜びの声が上がる。柳ケ瀬商店街の大衆食堂「大福屋」(同市神室町)の3代目、福井雅一さん(63)は、1977年に岐阜高島屋(同市日ノ出町)が開業した時代を懐かしみ、「当時は給料日になると、よく出ていたんだよ。天ぷら中華を盛り上げる活動に取り組んでくれるのはうれしい」と笑顔を見せた。