獅子頭を手に「最後にもう一度という願いがかなわず、本当に悔しい」と話す三島実五郎さん=高山市荘川町新渕
最後の開催となった2019年の飛騨荘川ふるさと祭りで披露された「日本一の連獅子」=高山市荘川町新渕、荘川の里

 獅子30頭が横一列になって舞う「日本一の連獅子」で知られる岐阜県高山市荘川町の「飛騨荘川ふるさと祭り」が先月末、新型コロナウイルス感染拡大により最後の祭りを行えないまま、三十余年の歴史に幕を下ろした。地域の人口減少と高齢化が進み、担い手の確保が難しいため。関係者は「コロナ禍の2年は、地域住民の体力とやる気を保ち続けるには長過ぎた」と唇をかむ。

 祭りは1988年、旧大野郡荘川村がぎふ中部未来博覧会のサテライト会場に決まったことに合わせてスタート。毎年10月に町内6神社の獅子が勢ぞろいし、江戸時代の民謡「数え歌」に合わせて勇ましく舞う。3年に1度は、農民が大名行列をまねたのが始まりとされる「ひねり踊り」も披露された。最盛期の2000年代前半には約1万人が訪れた。

 地域活性化の呼び水となった一方で、獅子舞や笛、太鼓の担い手、運営スタッフらを合わせると400人近くが必要。祭りが始まった頃に1500人ほどいた荘川町の住民は1100人を割り、高齢化も進んだことで、継続が厳しくなっていった。実行委員会事務局の三島実五郎さん(73)は「保育園を出たばかりの子どもから足腰が痛い老人まで、住民総出。あちこちから『もうえらいよ』と疲弊する声が出ていた」と思い返す。

 実行委は話し合いを重ね、20年を最後に祭りを終了すると決断。その矢先、コロナ禍が直撃した。渡邉登会長(75)は「外から人が来てこその祭り。町民から感染を心配する声を聞いたとき、開催は無理だと思った」と振り返る。「次こそ、有終の美を」と準備を進めたが、終息は一向に見通せず、2年が過ぎた。

 今年3月25日、実行委は最後の祭りを行わないまま、祭りを打ち切ると発表した。三島さんは「2年のブランクが、やる気を失わせる期間になった」と声を落とす。渡邉会長も、伝統が途絶えることを危惧しつつも「こんな状況で、住民に出てくれとお願いするのは心苦しい。一歩踏み出せなかった」とうつむいた。

 獅子舞は今後も、各神社の例祭で奉納される。三島さんは「このまま高齢化が進めば、ゆくゆくは神社単位でもできないところが出てくる可能性がある」と危ぶむ。それでも「なんとか皆で踏ん張っていきたい」と言葉を絞り出した。