
2026年3月30日掲載
[対談]全国健康保険協会(協会けんぽ)岐阜支部支部長 豊田 正康氏×岐阜県健康福祉部部長 中西浩之氏
3月9日に健康経営優良法人2026が発表されました。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」は、企業の存続・発展を考える上でも重要です。経営視点では「アブセンティズム」(心身の不調による欠勤など)だけでなく「プレゼンティズム」(出勤していても心身の不調で生産性が上がらない状態)がもたらす経済損失にも注意を払う必要があります。
健康経営普及に取り組む岐阜県と全国健康保険協会(協会けんぽ)岐阜支部の現状と今後について、医師である岐阜県健康福祉部部長の中西浩之氏と協会けんぽ岐阜支部支部長の豊田正康氏が意見を交わしました。
それぞれの「健康(経営)宣言」
豊田 はじめに、岐阜県とは多くの連携をさせていただき御礼申し上げます。健康経営に取り組む事業所を支援するため、2023年4月に「協会けんぽと健康宣言」を開始しました。県の「岐阜県健康経営宣言」との同時エントリーを可能としていただいたこともあり、本年度の1月末現在で2012社に到達しました。
中西 県の宣言企業数は、2023年度は924社でしたが2024年度は1258社、本年度は3月5日時点で1584社と増加傾向にあります。
豊田 連携によりお互いの結果につながっていると感じます。ただ岐阜支部加入事業所は従業員10人以上規模でも約8000社あるので、より一層広げていきたいです。
中西 県と協会けんぽの制度は、まずは「○○に取り組む」ということを宣言していただくもので、できなければ宣言を取り消すというものではありません。「健康経営の第一歩」としてまずは宣言から始めていただきたいです。
豊田 宣言後、何をすべきかで悩む企業も多いと感じます。

中西 地道な活動にはなりますが、県では健康づくり活動事例集「ケンカツTEXT」を作って配布しています。また、宣言企業の中から特に優れた取り組みを行う事業所を「健康経営優良企業」として表彰する制度を設け、事例集内でも紹介しています。毎年7月頃に募集を行っていますので応募をご検討いただけると幸いです。また、健康経営に関する県の事業一覧、関係機関一覧なども載せていますのでぜひお手に取っていただきたいです。
健診結果から課題を探る
豊田 健康経営を進めるには、従業員に健診を受けてもらい、課題の把握をすることが第一歩です。「プレゼンティズム」は勤務状況の管理だけでは見えづらく、健診や問診の結果を見ることが効果的です。
中西 県健康経営宣言企業の登録にかかる必須宣言項目として、「特定健診受診率100%を目指す」「特定保健指導実施率100%を目指す」の2項目があり、これは協会けんぽの宣言も同じですが「まずは健診を受診していただくこと」を重要視しています。
宣言企業から毎年提出していただいている取組報告書を確認すると、特定健診受診率や特定保健指導実施率を向上させるための取り組みも多く見受けられます。こういった事例は、県ホームページに掲載していますので、参考にしていただきたいです。

豊田 健診などの実施状況について、私どもでは事業所規模別や業種別でデータ分析もしています。例えば運送業は、健診はできても特定保健指導などその後のフォローが難しい、といった傾向などが見えてきます。
中西 健診は健康経営の入口ですが、あくまで早期発見のツールです。疾病が分かった後、通院しながらどう働いてもらうか。企業としての交通整理が求められています。産業医がいるところですとケアがしやすいのですが、総務担当者だけですと手一杯になりがちです。業種ごとの働き方をベースにどう合わせていくかという視点も大切です。デジタルトランスフォーメーション(DX)とかみ合わせていきたいですね。
豊田 私どもも加入者にあわせたサービス提供が必要と考えています。DXの活用も進めており、1月からは「けんぽアプリ」も開始しました。今は各種申請の「電子申請サービス」が主ですが、数年後には健診の予約や遠隔での特定保健指導もアプリ上でできるようになる予定です。
また、広く社会に健康保険の仕組みを理解いただくことも大切です。本年度は岐阜新聞の小学生向け広報紙「マナビのトビラ」で制度をわかりやすく発信しました。さらに小学校2校で食事等をテーマに健康教室も行いました。次年度は高校生向けの情報発信も検討しています。
中西 医療を受けられることは日本では「当たり前」です。この当たり前は、支え合いがあるから医療にかかることができるということを一人でも多くの人にご理解いただきたいです。全国の医療費の総額は50兆円に迫っています。必要な時に必要な医療にかかるため、自身の健康に目を向けることは自分たちを守ることにもつながります。
豊田 保険者としては医療費の増加で健康保険制度が立ち行かなくなることを危惧しています。将来の健康保険制度維持のためにも取り組んでいきますので、引き続き岐阜県のご協力もいただければ幸いです。本日はありがとうございました。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
わたしたちは、ぎふ健康づくり応援プロジェクトに参画しています










