私たちに寄り添ってくれる犬や猫。そんな彼らにも心があります。岐阜市の獣医師で、ぎふ動物行動クリニック院長の奥田順之さんは動物の心と行動の専門家。問題行動の裏にある犬や猫の本心、しつけをテーマに寄稿してもらいます。(月1回予定、岐阜新聞デジタル独自記事です)
おくだ・よりゆき 獣医行動診療科認定医、鹿児島大学共同獣医学部講師(動物行動学)。年間150症例以上の問題行動を診察する、ぎふ動物行動クリニック院長。動物行動学の専門家として、講演多数。ホンマでっか!?TVにも出演。著書に「犬の咬みグセ解決塾 (2018)」「犬の問題行動の教科書(2022)」「ペット産業CSR白書(2018)」「私の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法(2025)」。動物行動学の専門家として、ペット産業の適正化に取り組んでいる。
◆力で支配する理屈を正当化
「犬は序列を作る。だから飼い主が犬のリーダーにならないといけない」——そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。かつて犬のしつけの世界では、これが当たり前の考え方でした。しかし現在は、「犬が序列を作る」という話は科学的に否定されています。
「α理論」と呼ばれるこの考え方は、1970年代に、動物園で飼育されたオオカミの群れを観察した研究を元に生まれました。この研究では、力の強いα個体が、下位の個体を攻撃で支配し、2番目に強いβ個体がその次の地位、γ、δと直線的な序列構造が観察されたのです。
この研究が発表されると、直線的な序列構造を、犬と人の関係にあてはめ「犬が家族の中で上位に立とうとするから問題が起きる」と説明しようとする専門家が現れました。この考え方は、犬を暴力で支配する体罰的な訓練を行う専門家の理屈を正当化するものであったため、「犬が序列を作る」という話が広く社会に認知されるようになったと言うことです。
◆人間社会のルールを知らない
しかし、観察に用いられた群れは、人為的に集められた血縁のない成獣ばかりのオオカミで構成され、逃げ場のない囲われた空間で飼育...









