もとはといえば、人間が産み出したはずの文明の利器に、かえって人間自身が翻弄されてしまう滑稽さ。AIもまた然り、となるのでしょうか。
 でも、今回はそんな話ではありません。
 私たちは「自分にとって価値のあるもの」に気づかないまま、日々をやり過ごしているのではないか、という話です。

【事例1】
 Kさんの話です。
 ある日、社会人のKさんは缶コーヒーが飲みたくなって、自動販売機の前に立っていました。
 当時、一本の値段は110円。
 500円玉を勢いよく投入すると、押しボタンがパッと赤く全点灯! 砂糖たっぷりの小さめの缶コーヒーのボタンを押します。

 ピ・ピ・ピ・ピ・ピーーー。
 電子音が細切れに鳴って、これは当たりつきの自動販売機です。
 ジャッ・ジャ・ジャーン!
 おおっ、当たりっ!!ラッキー!!
 まあ、たまにはこれくらいのツキはあるわな、オレも、と。

 押しボタンは、パッと全点灯します。
 今度は違うので、となってオレンジジュースのボタンをポンと押します。

 ところが。
 ピ・ピ・ピ・ピ・ピーーー。
 ジャッ・ジャ・ジャーン!
 ・・・ま、また来たっ!!
 いや、これはスゲー!!なんとも、これは神様に選ばれし、オレ!
 誰か証人になってくれないかな、と周りをキョロキョロしますが、誰もおらず。

 そして、また全点灯。次はサイダーを押します。
 ピ・ピ・ピ・ピ・ピーーー。
 ジャッ・ジャ・ジャーン!
 ・・・・・・?! し、しまっ!!
 「ジャッ・ジャ・ジャーン!」は当たりの音ではなくて。
 お釣りのデジタルカウンターは、「170円」と表示していたのです。

【事例2】
 Sさんの話です。
 受験生のSさんの息抜きは、近所のショッピングセンターにあるゲームコーナーの「テーブル型コンピューター麻雀ゲーム」でした。
 ある時、いつものように100円を投入します。

 パッ、パッ、パッと画面上で麻雀牌が配られ、ゲームスタート!!
 ……んっ? ……んっ?
 しばらく待てども、牌をツモる(=牌をとってくる)ことができません。

 壊れた?
 パンパンと、昔の真空管テレビジョンよろしく叩いてみますが、反応はなし。
 ……と、見ると。
 画面左の方に「天和(テンホー)」の文字が!

 てっ、てん……!!
 Sさん、我が身の置かれた状況を誰かに伝えたくて、周りをキョロキョロしますが、誰もおらず。
 そしてSさんは、しばらくその場から離れることができませんでした。

 二つの話、ご理解いただけましたか?

 【事例1】は、500円で...