おじさんには、おじさんの食べたいものがある。「俺たちの岐阜メシ」は、岐阜市在住の食通・山本慎一郎さん(山本佐太郎商店社長)が、年間300日以上の外食生活で出会った「リアル岐阜メシ」を語る連載企画です。第9回は「麺 㐂色(きいろ)」(羽島郡岐南町)。特製塩そばで知られる岐阜を代表するラーメン店の一つですが、衝撃のニュースが明らかになりました。2027年春には現体制での営業を終え、オランダ・アムステルダムに出店します。なぜ? 店主の分部耕智さん(51)に聞くと、ラーメンに込めた哲学や感性が浮かんできました。(岐阜新聞デジタル独自記事です)
◆どうしたらおいしいものを届けられるか
――6周年、おめでとうございます。特製塩そばをいただきましたが、この6年間でかなりブラッシュアップされましたね。
ありがとうございます。スープも麺も、たぶん4、5回は変えていますね。
――なぜそれほど変え続けるのでしょうか。
いくつか理由があります。一つはコロナ禍で食材の生産量が縮小して、使っていた食材が入らなくなってしまったこと。それから、いろいろな限定メニューをやっているので、その過程で「あ、これいいな」「これ面白いな」と思ったものをレギュラーに取り込んでいくと、自然とスープや麺も変わっていく、という感じですね。
――お客様の嗜好に合わせるというより、自分自身の探求がフィードバックされていくということですか。
そうですね。最初のオープン当初は豚骨清湯(チンタン)をやっていたんですが、あれは修行先の「饗 くろ㐂」(もてなしくろき、東京都台東区)ではやっていないメニューを、自分でゼロから作りたかったという理由でした。それを1年ほど続けてから鶏清湯に変えました。やっぱり鶏の清湯が好きだなと思って。
その後、地鶏を使った塩ラーメンをやっていたんですが、コロナ禍で生産量が落ち、さらにそのブランド自体がなくなってしまったりで、今に至る形に変わってきました。
――食材の調達という点では、後発の店舗として厳しい部分もあるのでしょうか。
正直、厳しいですね。清湯系のラーメンをやるお店で地鶏を使っているところはすでに多いんですが、比内地鶏なんかはもう全然手に入らないんですよ。他のお店にほぼ押さえられてしまっている。丹波地どりも、名古屋コーチンも、いいところはほとんど押さえられている状況です。
――手に入る食材の中で最大限のパフォーマンスを引き出すということですね。
そうなんですが、それだけじゃ同じ土俵では勝てない。同じコーチンでも、誰がどう育てるかで個体差が全然違ってくる。いい生産者さんはもう先行店が押さえている。そこに価格の問題も重なってきます。
――岐阜という地域では、ラーメンの単価にも限界がありますよね。
そうですね。岐阜は千円の壁は超えてきましたが、2千円取れるかというと、まだほとんどない。千円後半まで行っているのは、東海エリアでは鉢ノ葦葉(三重県四日市市)、らぁ麺紫陽花(名古屋市中川区)、麺屋さくら(愛知県半田市)くらいですかね。もう全国区の知名度があるか、独自の顧客獲得がうまくて、金額の域を超えた存在になっている。平場のラーメン屋はやっぱりまだ厳しいですね。だから、使える原価の中でどれだけおいしいものを届けられるかを、ずっと考え続けています。
◆ラーメンには雑味が必要
――「麺 㐂色」は「ラーメンでありながら麺料理」と言われます。野菜の切り方、油の浮かべ方、スープの取り方、味を立体的に重ねていくその手法は、どこから来ているのでしょうか。
典型的に、修行先の影響ですね。師匠の黒木さんは、...









