小児科医 福富悌氏

 新型コロナウイルスの感染が収束しないためか、子どもが外で遊ぶ光景を見る機会が減りました。その一方でゲームに興じる子どもが多くなってきました。これについては感染を避けるため、外で遊べないから仕方がないと考える人が多いと思います。ゲームも、AI(人工知能)の時代に合った遊びだと考える人もいるのではないでしょうか。

 子どもは発達期にあるため、多くのことを体験し、学習することにより、身体的・知的あるいは社会的に適応できるように成長します。ところが子どもの成長には大人と異なり、いくつかの特徴があります。それはある一定の順序で発達することに加え、発達に適した時期があるということです。

 人間の子どもは他の動物と異なり、生後すぐには歩けません。だんだんと首が据わり、お座り、つかまり立ち、歩行、片足立ち、階段上り、ジャンプなどができてきます。そして身体の発達に伴って、身体を動かした多くの遊びを通して、身体の動きに合わせた平衡感覚や手足の動きを身に付けるようになってきます。

 このような身体の発達は、大人が思い立ってテニスやゴルフの練習を始めて上達することとは異なっています。いつでも始めればできることではありません。

 基本的な身体の動き、手足の協調した動き、平衡感覚などは脳神経の発達と密接に関係しています。そのため、発達に適した時期=グラフ=を逃すと身体の動き、手足の動き、平衡感覚を身に付けることが難しくなります。

 現代まで子どもは発達に伴って三輪車、鬼ごっこ、自転車などで身体の動きを身に付けてきました。最近、テレビで映し出されるウクライナの状況や自然災害は、危険から身を守るための身体機能の大切さを教えてくれています。特に身体のバランスは、脳の発達に関係している耳の奥の内耳の発達にも大きく影響しています。

 身体の協調した動きを身に付けるには一輪車など多くのものがありますが、子どもがそれらをゲームより楽しいと感じることが大切です。例えば、五輪種目に加えられたスケートボードも良いでしょう。狭い場所でも練習ができますが、プロテクターをつけて転倒に注意し、安全に練習しましょう。

(福富医院院長、岐阜市安食)