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オグリの里

笠松競馬に元気を、オグリ孫のミンナノヒーロー初勝利

立ち上がれ、あしたのために=その15



1着でゴールインし、初勝利を飾ったオグリキャップの孫・ミンナノヒーロー=水沢競馬場

 「不祥事のデパート」は相変わらずで健在ぶりを発揮?しているが、地盤はグラグラ。そろそろ店じまいしないと、騎手らのマンパワーを欠いて倒壊のピンチを迎えてしまう。笠松競馬の現役騎手が予想屋(元騎手)の懸賞に応募し、当選金10万円を受け取った問題も発覚。これだけ不祥事が続くと、うみを全て出し切ることは難しいようで、ここはもう神頼み。競馬場永続の守り神であるオグリキャップに助けを求めるしかないようだ。

 16年前、経営難による廃止の危機では、オグリキャップが再興の「救世主」となって笠松競馬場に里帰り。ファンを熱狂させて競馬場を活気づけ、その後の存続につなげてくれた。天国に旅立ってからもオグリ像が目を光らせてきたが、今回は現役ではただ1頭「オグリキャップの孫」であるミンナノヒーロー(牡4歳、佐藤祐司厩舎)が登場。トウホクビジンとのつながりで縁が深い岩手競馬で待望の初勝利を飾り、祖父が育った笠松競馬にも「元気」を届けてくれた。

 5月9日、水沢競馬場(岩手)を初めて訪れ、ライブ観戦してきたので、現地の盛り上がりをお伝えしたい。

村上忍騎手の騎乗でパドックを周回するミンナノヒーロー。後方は七夕裕次郎騎手

 ■オグリ一族の期待馬圧勝、大きな拍手沸く

 パドックには、第1レースから大勢のファンが詰め掛けた。オグリキャップの孫というスターホース候補の登場に、地元の放送局なども注目。周回から気合乗り上々だったミンナノヒーロー。パドック解説の松尾康司さんは「(芦毛の)毛づやがオグリキャップに似ていますね。デビュー2戦目で、たたかれて気配上昇」と絶賛。馬体重は515キロで、頭を下げてグイッと踏み込む力強さも祖父そっくり。騎乗したのは「地方競馬通算3500勝」まであと1勝に迫った名手・村上忍騎手。単勝1.0倍(元返し)の圧倒的支持を受けた。

 オグリ一族の期待馬の勝利が期待され、重賞レース並みの熱視線。「ウマ娘」人気もあって、競馬場に足を運んで応援する若者グループや女性ファンの姿も目立った。
 
 C2級の1300メートル戦、ミンナノヒーローはダッシュ良く先頭に立ち、向正面では後続を5馬身ほど引き離した。第4コーナーを回ると、村上騎手は1度振り返って後方勢の位置を確認。このクラスでは力が違い過ぎ、手綱を持ったままリードを広げて逃げ切った。1分23秒5の好タイムで、2着以下に3秒以上の大差をつけての圧勝だった。

 3着には、七夕裕次郎騎手(浦和から期間限定騎乗)のゲットリズムが入り、記念の「がんばれ馬券」のほか3連単を当てることができた。七夕騎手は佐藤祐司厩舎所属で、ミンナノヒーローの追い切りにも騎乗していた。

 コロナ禍のため「大声を出さないでください」の案内板が掲げられたゴール前。第1レースでは珍しく大きな拍手が沸き起こった。2度の骨折・手術によるJRA登録抹消(デビュー前)から再起を果たし、苦難の道が続く笠松競馬を勇気づける1勝にもなった。

 この勝利で村上騎手は通算3500勝を達成。メモリアルレースになって「持っている馬ですねえ」と賞賛の声も。1~3レースで3連勝を飾った村上騎手にミンナノヒーローの印象などを聞いた。

ミンナノヒーローの初勝利と、村上騎手(左)の地方通算3500勝達成を喜び合う関係者

 ■村上騎手「能力的にすごく楽しみな馬」

 ―オグリキャップの孫という期待馬ですが、レースは作戦通りでしたか。
 
 「逃げるか2、3番手では競馬をしたいと。道中、行きたがるそぶりを見せてきたんで、リズムを崩さないようにと」

 ―脚元に不安を抱える馬ですが、走りの状態はどうですか。

 「乗っている感じでは、前に痛めた所で気になることはないですし、今のところ順調です」

 ―C級のレースでしたが、今後の走りはどうか。 
 
 「まだデビューしたばかりで、これから覚えていくこともたくさんある。基本的な能力面では今後すごく楽しみが持てる馬だと思います」

 ―脚質的にはどのようなレースが合いそうですか。

 「能力検査で砂をかぶるレースも経験しているんで、これから探りながらという形に。距離に関しては、前半ちょっと行きたがるんで、今の時点ではあまり長くならない方がいいかと。馬格もあるんで、教え方次第では距離もこなしてくれるでしょう。控えた競馬でも大丈夫です」
 
 ―3勝すればJRAに戻れるということですが。

 「元々、中央時代からの期待馬。岩手で走っている間、僕ができることはいろんなレースを教えていくこと。そうすれば中央に帰った後もレースがしやすいから、その辺を心掛けてやっていきたいです」

 ―JRAでは、ある程度走れそうですか。
 
 「どうですかねえ。能力的には1勝クラスに入っても見劣りないと思う(兄・ストリートキャップは中央3勝馬)。あとはレースに対しての柔軟さや器用さなど覚えて、1戦ずつ成長してくれたらなあと思います」

 ―ご自身の3500勝の節目をこの馬で飾って、記念の勝利になりましたね。

 「先週の時点であと1勝だと聞いていて、この第1レースでぜひ勝たなきゃと自分的にも思っていて、ちょうどそれが(馬の初勝利と)重なりました。自分のことよりも、この馬が強い内容で勝ってくれて、すごくホッとしています」

大差をつけてゴールに向かうミンナノヒーローと、4コーナー近くで見守るファン

 ■「ファンの多い馬で、中央の戦いの場にお返ししたい」
 
 管理する佐藤祐司調教師にも聞いた。

 ―2戦目で初勝利を飾りましたね。

 「2月に転入の話を聞いた。2度骨折し手術していますが、前走2着でデビューでき、状態が良かった。2戦目はタイム面などからもいい競馬になると。楽なレースをしてくれたが、村上騎手の3500勝目だと分かっていたし、いい日に当たりました」

 ―先手を奪うレース内容でしたね。

 「騎手に任せてあり、メンバー的には苦労しないだろうと。今後は骨折が3回目にならないようにしたい。ファンが多い馬で、中央の戦いの場にお返しするのが最大の役目で、ホッとしています」

 ―次走についてはどうですか。
 
 「のんびりと状態を整え、大事に使いたい。勝ち上がっていけば、メンバーは強くなる。いい所ばかりじゃなく不安もありますが、脚元は問題なく、完全な状態で出す自信はあり、2、3クラス上でも通用する。3連勝後に休養してから中央の舞台に立たせてあげたい。地方と中央では、調教スタイルから違いますが、この馬の将来のことを考えていきたい」

 ■オグリキャップ精神で笠松競馬再生へ

 祖父と同じく初戦2着惜敗から、2戦目で楽々初V。オグリ一族の血脈を継承する貴重な後継馬として、今後どこまで駆け上がるのか。岩手で3勝すればJRAに復帰することができ、成長が楽しみだ。引退の危機を脱しての勝利は「さあ頑張るぞ」と笠松競馬にも強烈なムチを入れてくれたかのようだ。どんな苦しい状況でも諦めずにゴールを目指す「オグリキャップ精神」は、笠松の現場にも脈々と受け継がれているはずだ。フレッシュなオグリパワーに刺激を受けて、どん底からはい上がっていきたい。

1月12日のレースを最後に4カ月間も開催がない笠松競馬

 ■笠松競馬、再開時の地元騎手は9人に

 笠松競馬の騎手がSNS上で実施された予想屋の懸賞に応募し、当選金10万円を受け取った問題。この騎手が「騎乗停止」の処分を受ければ、今後レースが再開されても、騎乗可能な地元騎手は現状10人から1人減って、9人になってしまう。レース運営上、既にぎりぎりの状態だが、さらなる不祥事発覚で「カウントダウン」が進まないことを祈るばかりだ。

 地方競馬では売り上げの8割ほどをインターネット投票が占める時代になった。馬券の不正購入で「競馬関与禁止・停止」になった笠松競馬の元騎手、元調教師は計12人。競馬場の出入りやネット投票サイトへの会員登録は禁じられたが、ネット上で競馬予想を行うことは制限できないという。

 ネット投票全盛になって、有料のレース予想や情報はあふれている。競馬組合の「管理者指示事項」には、騎手の交友関係について注意を促し、競馬の公正を害する恐れがあると認められる者からの金品の贈与や、酒食、遊興などの行動を共にすることを禁じている。

 これに抵触して処分を受ける笠松競馬の騎手は、組合の面談で「生活費の足しにした。ばかなことをしてしまい、反省している」と話し、12日に現金書留で元騎手側に10万円を返金した。

 ■ファン「反省して、恥ずかしくない騎乗を」

 人気騎手であり、ファンも心を痛めている。

 「笠松を背負う期待の星なのに残念。自粛がなかったら、こんな事はしてないだろうね。これで開催遠のいたんじゃないかな。本人にはしっかり反省してもらって、再開されたらファンに恥ずかしくない騎乗を」

 「組合は3月に把握していたなら、なぜ処分発表の会見で言わないのか。後から後から出したら、余計信頼なくすよ。『また笠松か』と言われっぱなしだから、ファンとしては悲しい。『推し騎手』が処分されるのはつらいです」

 ■レースがなく、騎手の収入は激減

 騎手の主な収入源はレース賞金(進上金5%)、騎乗手当、調教手当である。1月の開催自粛以降、レース賞金はなくなった。騎乗手当相当額の補償はあるが、支給は処分絡みで保留になっていた。所属馬は100頭以上減少。調教日も減り、1頭300円程度(保険料込み)の調教手当が唯一の収入源だ。馬乗りとしての生活は厳しさを増し、朝の攻め馬後の空いた時間に短期のバイト(居酒屋などでも)で生活費を稼ぐなどして、しのいでいるという。

 今回の問題。本人は軽い気持ちで懸賞に応募したのだろうが、今となっては運悪く当選し、現金を受け取っていた。確かにばかなことをしてしまったが、レース自粛中でもあり、予想行為とは無関係で騎乗停止処分は厳し過ぎる。公正確保のためではあるが、既に騎手数がゲート数より少なく、非常事態にある。成長著しい笠松競馬のエース級の騎手でもあり、騎乗停止期間はできるだけ短くしてもらいたいが、どうだろう。