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オグリの里

元気です笠松競馬、藤原騎手が1000勝達成



2歳馬ファニーに騎乗し、地方通算1000勝のゴールを飾った藤原幹生騎手(笠松競馬提供)

 ここは一連の不祥事による「場外戦」でお騒がせしてきた笠松競馬場。コロナ禍で岐阜県に発令された緊急事態宣言のため無観客ではあるが、「浄化・再生」を誓って本年度2開催目を迎えることができた。

 9月8日の再開初日には多くの報道陣が訪れたが、23日には関係者向けのユーホールもガラガラ。秋晴れに恵まれた祝日でもあり、観客入りなら熱い笠松競馬ファンをはじめ、「ウマ娘」の聖地巡礼でにぎわったことだろう。それでも、出走馬が周回するパドックの光景や、広がるのどかな田園風景を眺めていると、ようやく「ホッとできるワンダーランド・笠松競馬場の日常が戻ってきたな」と感じることができた。ネット越しのライブ中継でも、「クリーンで元気な笠松競馬」が多くのファンに伝わったことだろう。

 真夏日となった秋分の日、熱い戦いが繰り広げられた。1Rの800メートル戦、1番人気のファニー(牝2歳、後藤正義厩舎)には藤原幹生騎手(40)が騎乗。スタートダッシュで先手を奪うと、楽な手応えで深沢杏花騎手騎乗のサンジョノコに3馬身差をつけて完勝。藤原騎手は地方競馬通算1000勝を達成した。装鞍所に戻ると、勝利馬との口取り撮影で喜びがはじけた。一連の不祥事による8カ月間のレース自粛を経て、信頼回復に向けて一歩ずつ進む笠松競馬にとっても明るいニュースになった。笠松の現役では向山牧騎手に続いて2人目の1000勝で、最終レース後、藤原騎手に喜びの声を聞いた。

1000勝を達成し、笑顔の藤原騎手。2歳馬の重賞戦線でも活躍が期待されている

 ■東海ダービーV、北海道でも勝利量産

 笠松では現役ただ一人のダービージョッキーでもある藤原騎手。通算1000勝の大台を達成し「デビューしてちょうど20年という節目もいいですし、4桁という節目のいい勝利をさせてもらいました。これからもどんどん頑張っていきたい」と歓喜の表情。前日の1勝で1000勝に王手となって、この日の2歳戦では「周りの馬と比べたら、(1番人気で)いけるんじゃないかと思っていました」と自厩舎の馬での記録達成に狙いを定めていた。

 これまで一番の思い出のレースは「全部思い出深いですけど、(ビップレイジングで)ビッグレースの東海ダービーを勝たせてもらったんで、それが一番ですね。(すごい追い込みで)きれいに決まったなあという感じでした。他にもいろいろ中央(計9戦)や他地区でも乗せてもらって。北海道(期間限定騎乗)では、2歳新馬が多かったんで、大きい馬主さんの馬にも乗せていただいて良かったですね」。1000勝のうちには北海道での勝利も数多く含まれており、「どうでしょう、20勝ぐらいでしたかな」と。もう6年前になるが「何かに挑戦し、新たな刺激を求めて」と3カ月間の武者修行で、確かに23勝も挙げる活躍を見せた。

 ジョッキー人生20年間を振り返って「(1000勝まで)時間はかかりましたが、次の区切りの勝利まで、どんどん乗って勝っていけばと思います」と1000勝を通過点として、勝利を積み重ねていく決意を示した。

 ■攻め馬だけで収入減、焼き肉屋やラーメン屋でバイトも

 8カ月間の自粛からレースが再開されて2開催目。「このままレースがやれて、騎手も増えて、また盛り上がっていけたらいいです」と笠松の再生を願った。攻め馬だけの期間が長く、本業での収入は一時激減し、厳しい生活にもなった。「攻め馬だけでなく、焼き肉屋とラーメン屋で昼夜のバイトもしていました。なのでもう、攻め馬だけの時もずっと仕事してるって感じでした。(再開されてからも)バイトはラーメン屋だけですが、土日の昼と夜に今もやってます」とのことで、競馬場以外でも精力的に働く姿は頼もしい。自粛中は朝の攻め馬が終わればレースもなく、時間に余裕があってのことで、バイトは他の騎手も居酒屋などで働いていたようだ。

 騎手の生活については、不適切事案での第三者委員会報告書でも、低収入に対する待遇改善が求められていた。笠松所属の騎手数は9人に半減しており、けが人も出てデッドラインにある。競馬組合では、来年以降も賞金・手当のアップを続け、新人騎手の加入や他地区からの移籍・期間限定騎乗につなげていくべきだ。

ファニーで1000勝を達成。喜びの藤原騎手と関係者(笠松競馬提供)

 ■助っ人の名古屋の騎手には負けないように
  
 笠松の歴代リーディング騎手らが「引退」となって、その分、勝利は他の騎手に分散。逃げて良し、追って良しの藤原騎手には勝ち星を量産してもらいたいが、助っ人である名古屋の騎手もいっぱい勝っており、この日は2R以降7連勝(岡部誠騎手が4勝)。名古屋勢との対戦では「やっぱり乗れる人が来るんでねえ。そこそこの馬に乗っているんで、(こっちとしても)負けないようにしたいですが、なかなか厳しいですわ」と笠松、名古屋の騎手の勢力地図の様変わりも実感。笠松競馬を引っ張っていく立場になって、リーディング争いも期待されているが「いやあ、きついですねえ。全然勝ってないしねえ」と。9月のシリーズは4勝、3勝で今年は11勝だ(リーディング3位)。

 通算100勝以下で見習騎手でもある若手については「攻め馬も任せられないくらいで、まともに乗れてないですからね」と、愛情を込めての厳しい言葉もあった。「力強く追い込む藤原騎手は憧れの存在」という長江慶悟騎手は、9日のレースで落馬し、療養中となった。藤原先輩としては「ひょろひょろなんで身体能力がまだ低過ぎますね。体幹などもね」と後輩の体力強化と成長を願っていた。
 
 愛称はミッキー。プライベートでは、現在独身で「(女性には)ほっとかれてます。もっと勝たないといけないですね」と苦笑い。攻め馬では若手騎手より、おしゃれな騎乗姿で目立っていたし、馬を動かす手腕は際立っている。今後は自厩舎に有力馬も集まりそうで、東海ダービーのような豪快な差し切りでの1着ゴールを増やしていきたい。

 ■新馬戦をシルバがレコード駆け、楽しみな1頭

 来月から始まる笠松の重賞戦線に向けては「この前、新馬戦を勝ったシルバは、すぐ南関東に持っていくかなあと思ってたら、(笠松に)まだ置いといてくれるようで。距離が持てば、スピードはあるんで楽しみです。オープンの方は生きのいいのは、あんまり乗っていないです」といい、得意の2歳馬戦での強力タッグは注目だ。

 シルバは800メートルを47秒4でレコード勝ちした快速馬。「馬場が軽かったこともありますが、バネがいいんで走るだろうなあと。思ったより、時計が良かったです」。年内の目標については「取りあえず、この調子で競馬が続いてくれたらいいなあと。しばらく落ち着くまでね」と。最終日の新馬戦でもナンジャモンジャ(牝2歳、大橋敬永厩舎)を勝利に導いた。道営の2歳戦で鍛えた手綱さばきで、若駒との相性は抜群だ。

 「クリーン度100%」のイメージで、競馬場関係者が一丸となって信頼回復に努めていることに関しては、「いろいろ頑張ってくれていると思いますが、試していることをいい方法に変えていかないとね」とも。レース自体の展開については「馬場は『前で内が有利』で、流れるレースが多くなった感じです」。新生・笠松競馬で「藤原騎手に頑張ってもらいたい」というファンの思いも強く、「応援していただければ」と力を込め、「祝・1000勝」では左手で「1」のポーズを決め、喜びに浸った。達成セレモニーが10月5日、場内で予定されており、緊急事態宣言が9月末で解除されれば、観客入りでの開催となりそうだ。

昨年10月にデビューし、再開初日のメインレースにも騎乗した長江慶悟騎手。けがに強くなって成長が期待されている

 ■戦線離脱の長江騎手、ファンは復帰を待っている
 
 昨年10月にデビューした長江慶悟騎手(21)=後藤佑耶厩舎=は再開初日、5Rの放馬に続き、11Rではスタートで馬がつまずいて落馬。2日目5Rでは最低12番人気の馬で2着に突っ込む活躍を見せたが、続く6Rでは騎乗馬が転倒し、長江騎手は落馬、負傷。2日間でゲートも含めて3度も不運に見舞われ、戦線離脱となったが、復帰を目指して療養中だ。まずは自身の体力強化に努め、馬込みなどでのコース慣れも求められており、けがのない騎乗を身に付けていきたい。

 まだデビューして1勝の長江騎手。苦難の日々が続くが、振り落とされた馬で初勝利を飾ったように、ジョッキーとしての根性はある。再開初日の放馬では、隣の馬が倒れ込んだ影響を受けたし、「若いうちにたくさん勉強や経験を積んで腕を磨いて、将来は笠松の顔になってほしい」と応援し、復帰を待っているファンも多い。
 
 ■10月開催は観客入りか、オータムカップや秋風ジュニア開催

 凍結されていた笠松競馬分のJRAネット投票は、9月22日から再開された。浦和、金沢、園田など他場での開催が多く、ネット投票でのファン争奪戦が激化。笠松の売り上げは初日1億6500万円、2日目1億7400万円と厳しい数字だったが、3日目2億8600万円、最終日は3億5700万円とまずまず。このうちJRAネット投票は2日間で9300万円だった。

 次回開催は10月5日から4日間で、観客入りになるか。7日にオータムカップ、8日には延期された秋風ジュニアが開催される。オグリキャップ、ライデンリーダーなどが勝った秋風ジュニアは、中央挑戦にもつながった伝統のレース。笠松所属馬限定の1400メートル戦で、レコード駆けのシルバや実戦向きのドミニクなど後藤正義厩舎勢が新馬戦を勝っており、厩舎一丸、フレッシュなスターホースづくりに燃えている。10月28日にはラブミーチャン記念、11月24日には笠松グランプリも予定され、秋競馬の重賞戦線が復活。よりパワーアップして、元気な笠松競馬をアピールしていく。