皮膚科医 藤井麻美氏

 いったんは収束に向かうと思われた新型コロナウイルス感染症の流行ですが、東京などの大都市を中心に再び拡大してきています。前回は感染予防のための適切な手洗いについてお伝えしました。手洗いと同様にマスクの着用は感染予防に欠かせませんが、今回はそれによって起こる肌荒れとその対策についてお話しします。

 皆さんはマスクが当たる部位に、ニキビや湿疹ができることはありませんか。口や鼻周りにこうした症状がある方は、マスクによる肌荒れかもしれません。最近、私の周囲で働く看護師さんから「マスクのところにニキビができて困っています」などと相談を受けることが多くなりました。患者さんも同じような悩みを口にされます。外出時に常に着用することが求められる状況ですので、こうしたトラブルは少なくないようです。

 このような肌荒れの主な原因は、マスクによる摩擦(こすれ)とマスクの着脱による蒸れや乾燥です。一般的な不織布マスクは表面が毛羽(けば)立っているため、顔の表情や口の動きに伴って肌とこすれ合い、皮膚の表面がダメージを受けます。すると皮膚のバリアー機能が低下し、敏感な状態になってしまいます。加えて、マスク内に呼気がたまることで湿度が非常に高くなり、咳(せき)やくしゃみなどで飛んだ唾液に含まれる雑菌が繁殖しやすい状態になります。

 また、乾燥については「蒸れているから、水分はたっぷりあるのでは?」と思われがちですが、こうした状態でマスクを外すと急激に水分が蒸散し、かえって乾燥してしまうのです。

 皮膚との摩擦を減らすため、お薦めは肌に優しい綿100%のガーゼマスクです。不織布マスクを使う場合は、内側にガーゼを挟むのも有効です。ただし、先ほど述べたように唾液に含まれる雑菌が繁殖しやすいため、ガーゼは毎日取り換えてください。マスクと肌の接触面にワセリンなどの保湿剤を塗ると保湿効果と摩擦軽減の両方が期待できます。綿のマスクは通気性もよいため、蒸れを防止する点でも優れています。マスクを外したときには適宜、余分な皮脂や汗を拭き取って清潔を保ち、保湿剤を塗るようにしましょう。

 普段のスキンケアをきちんとすることも肌荒れの予防になります。汗や汚れはこまめに拭き取り、清潔を保つため、しっかり泡立てた洗顔料を使って優しく洗ってください。洗顔後は化粧水やクリームなどで保湿し、肌のバリアー機能を高めるようにしましょう。マスクをつける前に保湿剤を使用するのも有効です。

 それでもニキビができてしまう場合は、早めに皮膚科を受診してください。ニキビの治療は毛穴の詰まりの改善と、炎症を抑えるのを同時に行う必要があります。皮膚科で薬を処方してもらえます。また、かゆみを伴う湿疹はステロイドの外用薬が必要な場合もあります。この場合も皮膚科を受診してください。

 今後もマスク着用が求められる状況が続くと予想されます。適切にケアをしながら、しっかり感染対策を行っていきましょう。

(岐阜市民病院皮膚科医員)