乳房造影MRI検査では、専用コイルの上に胸を当て、腹ばいの姿勢をとる

乳腺外科医 長尾育子氏

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令中には、予定されていた乳がん検診が一斉に中止になりました。現在は宣言が解除され検診を再開していますが、4月以降からこれまでに予定通り検診を受けられなかった方が多くいらっしゃいます。

 今後、感染の第2波、第3波の影響により乳がん検診が予定通り受けられない場合、コロナウイルスから身を守り、同時に乳がんからも身を守るにはどうしたらよいのでしょうか。そのような時に大切になるのが「乳房のセルフチェック(自己検診)」です。

 忙しくても、月に1回、乳房にせっけんをつけて素手でつるつるとなでるように洗いながら硬いところはないかチェックしましょう。もし、しこりを感じたら、その時はためらわずに乳腺外科を受診してください。また、自粛生活ではおのずと行動範囲が狭くなり運動不足に陥りがちです。運動は乳がん発症リスクを減少させるといわれていますので、乳がんと診断されていない方も乳がんの治療を受けた方も、少なくとも1日に10分程度の運動を継続して行うことをお勧めします。

 緊急事態宣言発令中、私が勤めている病院の乳腺外科外来には、予定していた受診をどうするべきかを問い合わせる電話が1日に何本もありました。連日の医療崩壊の報道により病院の状況を心配した方は多いでしょうし、不要不急の外出を自粛するよう言われたものの、受診は不要とは思わないが不急かどうかがわからない、と迷われるのは当然だったと思います。

 原則として、病院から予約の変更をお願いされない限り予定通りに受診していただけますが、多かった問い合わせと対応についてご紹介します。表は「予定通りに受診した方がよいですか」の問い合わせに対する当院の回答です。コロナ禍において自分の受診を迷った場合は、これらを踏まえたうえで必要時には病院に電話で問い合わせることをお勧めします。

 幸い現在は新型コロナウイルス感染も落ち着いていますので、クリニック、診療所、病院受診も通常通りしていただいて大丈夫です。乳腺外科でも通常通りの乳房検査、乳がんの手術を行っています。

 さて、今日はもう一つの話題として、乳房検査の中ではあまり知られていない乳房造影MRI(磁気共鳴画像装置)検査についてご紹介します。乳腺外科を受診すると最初に行う検査はマンモグラフィーと超音波検査ですが、さらに詳しい検査が必要な場合にMRI検査を行います。

 体が入るスペースが狭いことに驚かれる方が多いので写真もご覧ください。MRI検査は磁場と電波を利用して行う画像検査で放射線被ばくはしません。乳房内の腫瘍の広がりを確認するため、また、診断が難しい病変の場合にはがんの疑いがあるかを判断するために行うことが多いのですが、今後は遺伝性乳がんに関連して乳がん発症リスクが高い方への乳房検査としても重要となってきます。

 検査中の姿勢は腹ばいで、二つの穴の開いた専用の器具に胸を当てた状態のままトンネル状の装置に入ります。造影剤を点滴しながら約30分間はそのままの状態でじっとしている必要があります。検査中は機械音が聞こえますが、ヘッドホンで音楽を聴くことができ、隣の部屋で操作している専門技師の声も聞こえるので安心です。乳腺外科ではMRI検査により乳房内の詳細な検査を行い、乳がんの診断と治療に役立てています。

(県総合医療センター乳腺外科部長)