世界緑内障週間「ライトアップinグリーン運動」の県内向けポスター

眼科医 岩瀬愛子氏

 緑内障の研究者らで構成する学術団体「日本緑内障学会」は、全国の自治体や各都道府県眼科医会、医療機関などと協力して、今年も3月7日(日)~13日(土)の「世界緑内障週間」に、各地で「ライトアップinグリーン運動」を実施します。岐阜県では今年も、「岐阜城」「多治見市役所駅北庁舎」「多治見修道院」などの公共機関と、多くの医療機関や眼科関連の施設で緑色の光によるライトアップをします。

 2015年に日本の5カ所で始まったこの運動は、2020年3月の実施期間には全国で278カ所、海外でも多くはないですが実施されるようになりました。2021年も全国で200を超える施設での実施が見込まれています。

 なぜこうした運動が必要なのかについて、昨年のこの連載でも紹介しましたが、再度お話をしたいと思います。この運動の目的は、緑内障という病気について、多くの方に正しい知識を持っていただくことです。そして不必要に恐れず、どう対処したらいいのかを知ってほしいのです。

 緑内障は、40歳以上の20人に1人がかかり、70歳以上になると10人に1人以上がかかると報告されているので、決してまれな病気ではありません。そして、病気の初期や中期はほとんど症状が無いため、患者さんの多くは、自分が緑内障にかかっていると自覚しません。そして進行して日常生活に支障を来すようになって、やっと気付くこともまれではありません。緑内障は、かなり進行するまで視力は良いまま、視野が欠ける病気ですが、自分の視野が欠けていることにはなかなか気付けないからです。

 緑内障で見えなくなった視野は治療しても戻らないので、病気があれば早期に治療を開始しなければなりません。進行を止め、日常生活が不自由になるのを防ぐことが治療になります。一方、緑内障は日本で「視覚障害」で障害者手帳を発行する場合の原因疾患の1位と報告されていますが、決して、緑内障になった人のすべてが失明するわけではなく、治療によって日常生活に支障のないレベルを維持している人が多いことを忘れてはいけません。

 進行には個人差があり、治療方法もいろいろあるので、眼科で治療を継続し、その時期にどういう治療をしていればいいのか、今の治療でいいのか、目薬は今のものだけでいいのか、変更すべきなのか、手術などをすべきなのか、などの判断を、検査のたびに繰り返しながら、一生かけて目の管理をすることが緑内障の治療です。何より大事なのは主治医や支えてくれる周りの人と一緒に、正しい知識を得た上で希望を持って治療をし、「見える」を維持することです。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大や自然災害など、命を脅かすような脅威がある時は、緑内障のような自覚症状のない病気は放置されがちです。しかし、いつか日常を取り戻した時、進行してしまった緑内障に嘆く人が一人でも少ないことを願って、今年もライトアップinグリーン運動は実施されます。伝えたいメッセージは、「早期発見・継続治療・希望」です。

(たじみ岩瀬眼科院長、多治見市本町)