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教えてホームドクター

依存症⑤

耐性つくと依存度上昇 「離脱時」体と心に不快な症状



岐阜大学精神科医 塩入俊樹氏

 今回は、依存症を理解するために、とても重要で依存症に典型的な症状である、耐性と離脱症状についてお話しします。

 耐性という言葉を聞いて、「耐性菌」を思い浮かべた方も少なくないかと思います。「耐性菌」とは、環境条件や抗生物質などの一定の薬物に耐え、生きる性質を獲得した細菌などの病原菌のことです。よく、抗生物質を使い続けていると、細菌の薬に対する抵抗力が高くなり、薬が効かなくなることがあります。このように、薬への耐性を持った細菌のことを特に「薬剤耐性菌」といいます。つまり耐性とは、環境の変化に対して適応していく生物の能力のことを示す言葉です。

 では、依存症における耐性とは、どんなものをいうのでしょうか。アルコールや特定の薬物(2月10日付本欄、依存症②「依存症の種類」参照)を習慣的に摂取し続けることで、その物質によって得られる変化(例...少量のアルコールでは、爽快感、幸福感、解放感など)に体が慣れてしまい、今までと同じ量を摂取しても、今まで通りの効果が得られなくなってしまうことを耐性、このような状態になったことを「耐性がついた」といいます。つまり、耐性とは依存対象の物質・行動に対する私たち人間の反応に慣れが生じることです。耐性がつくと、そのため、気付かぬうちに使用量や使用頻度がどんどん増えてしまうのです。

 次に、離脱症状です。離脱とは、ある状態や組織などから抜け出す、離れることです。ですから離脱症状とは、依存対象となる物質・行動を急にやめたり、量を減らしたりした時に生じる、不快な体と心の症状(身体症状・精神症状)のことです。ただし、毎晩1合の日本酒を飲んでいた方が、急に晩酌をやめたからといって、離脱症状が出ることはありません。例えば、嗜好(しこう)品であるアルコールによる離脱症状が現れるには、既に耐性が生じており、毎日の摂取量が大幅に増えていること(大量飲酒)が前提となります。一方で、覚醒剤などの違法薬物ですと、少量、1回の使用でもすぐに脳内のドパミン(ドーパミン)を大量に増やしてしまい、「報酬系」の神経回路が過活性状態となりますから(7月28日付本欄、依存症④「依存症の原因」参照)、すぐに依存症になってしまいます。

 離脱症状は、使用していた物質によりますが、例えば、頭痛、発汗、吐き気、嘔吐(おうと)、寒け、血圧・心拍数の上昇、体の痛み、手または体の震え、痙攣(けいれん)、発熱、不眠などの身体症状や、不安、イライラ、意欲の低下、幻覚、幻聴などの精神症状、実に多様です。また、ギャンブルやゲームに依存している場合も、イライラや落ち着きのなさ、気分の落ち込みなど一部の離脱症状が起こるようです。

 そしてこのようなつらい症状を和らげるために、依存対象の物質・行動を再度使用してしまうことが多く、本来は「やめたい」「減らしたい」と思っていても自分の力だけで変えることが難しくなってしまうのです。また、一定期間断酒や断薬をしていた人が再使用してしまうことを「スリップ」といいますが、スリップから再び依存症の状態に戻ってしまうことも少なくありません。

(岐阜大学医学部付属病院教授)




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