身に付けるべき資質や能力について話し合う学生ら=岐阜市柳津町高桑西、岐阜聖徳学園大学

◆新学習指導要領「資質・能力の育成」とは

 教育実習生だったAさんが、4月から県内小学校の新任校長で赴任しました。異動の新聞で彼の名前を見つけた時には、懐かしさや当時の破天荒な彼の姿が思い出され、胸が熱くなりました。それは、「自分は教師を志望しているわけではありません...」などと言って教育実習に入った彼が、なんと一カ月の実習の最後に「自分は先生になりたい!」と力強く言ったのです。

 私は、改めて学級集団の持つ力、人と人との関わり方の大切さを実感しました。彼は子どもたちとのより良い人間関係の中に、「教育」という自分の一生の仕事を見いだしたのです。望ましい学級集団が彼の生き方を変えたと同時に、子どもたち自身も日々変化していくAさんと生活を共にし、多くのものを学んだに違いありません。

 来年度、小学校から順に新学習指導要領が完全実施されます。われわれ教師は、一般企業の経営とは違い、およそ10年ごとの学習指導要領の改訂で世の中の動向を確かなものにし、教育内容や方法を変えています。しかし、今回の改訂は「主体的・対話的で深い学び」による「資質・能力の育成」が目玉であり、明らかにこれまでの改訂と違うことは周知の通りです。

 「ソサエティー5・0と呼ばれる新たな情報社会に生きる子どもたちに、どのような資質や能力を身に付けなければならないか」を、われわれ教師は地域や保護者の方々を含めた広い話し合いの中で共通理解していく必要があります。

 先日、本学教育学部でこの質問をゼミの学生たちにしてみました。小グループでの話し合いの後、グループごとに提案し、全体の場で論議してまとめられたのは、「自ら主体的に判断し、選択するなどの行動力」、「(いろいろな人との)コミュニケーション力」、「仲間と新たなものを発想・創造する力」、「高度な情報機器への適応力」、「相手を思いやる心」、「(健康に生活するための)体力」などでした。ほとんどが他の人とのつながりや集団の中で身に付けていくものであることが分かります。

 そうなると例えば、学校では望ましい学級集団(学習集団)づくりを小学校1年生からどのように育成するかを学校経営のベースとし、これらの資質・能力等を具体的にどのような場で段階的に指導していくかを教育課程に位置付け、マネジメントしてはどうでしょうか。また、現在各学校の教育目標は、「知」「徳」「体」の三つの視点で明文化されているのがほとんどです。これを資質・能力の三本柱「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」でそれぞれ具体化し、その具体的な項目を視点に子どもの達成状況を調査して教育課程に位置付け、マネジメントしようとしている学校もあります。

 このやり方がベストというものはありません。それぞれの学校で、まずはこれまでの先生方の実践を振り返り、地域や保護者の方々と学校が同じ足場に立って、近未来に生きる子ども達に育成すべきものを具体化することから始めたいものです。学級集団づくりを基盤としたわれわれの日々の授業は、そこから変わっていくのではないでしょうか。