地元住民に指導を受け雅楽を習う北濃小学校児童=郡上市白鳥町二日町、同校
「少年文化のつどい」で雅楽の演奏を披露する北濃小学校児童=同市白鳥町白鳥、白鳥文化ホール

 白山信仰美濃馬場(ばんば)の歴史を持ち、古くからの伝統文化が受け継がれる郡上市白鳥町。同町二日町の北濃小学校では、地域住民から指導を受けながら、5、6年生24人全員が「雅楽」の演奏に取り組んでいる。音を出すことさえ難しい笛や特有の音階と格闘しながら、結婚式などでおなじみの「越天楽」を習得。他の学校ではなかなか見られない日本古来の音楽への取り組みを通し、古里の伝統文化や、受け継いできた住民の思いと向き合っている。

 「トラロル、タアラア」。9月下旬、体育館にはリズムをとる児童の声が響いた。雅楽の譜面はドレミの音符ではない。児童は譜面の仮名を口ずさみながらメロディーで旋律を体に刻み込んでいた。

 「総合的な学習」の時間を利用した授業は今年で7年目。地元の雅楽グループ「北濃節風社」のメンバーを講師に招き、6月から週1回ペースで練習してきた。同社は1902年創立で会員12人のほとんどは同小校区の住民。地域の神社仏閣の神事で生演奏を続ける。代表者の山本孝二さん(71)は「長年続くこの街の伝統に親しんでもらいたい」と話す。

 演奏の核となるのは、空を舞う龍の鳴き声を表す横笛「龍笛(りゅうてき)」と、地上の人の声を表す縦笛「篳篥(ひちりき)」。そこに竹製の笛「笙(しょう)」と3種類の打楽器が花を添える。山本さんによると、龍笛は普通のリコーダーより穴が大きく、肺活量が必要で子どもはなかなか音が鳴らないという。

 龍笛を担当する6年生の三島明斗くんは「5年生の最初は音が出なかった。今はみんな上手になって演奏が楽しい」と話す。5年生で篳篥、6年生になって笙を担当する西村奏音さんは「篳篥は音を鳴らすことに苦戦した。笙は指の押さえ方が難しい」と違いを教えてくれた。6年担任の大澤一毅教諭は「今年は(昨年を経験している)6年生が16人と多く、完成度が高い」という。

 演奏は、今月13日に白鳥町内で行われた「少年文化のつどい」で披露。紫の衣装に烏帽子(えぼし)姿、和装の児童が奏でる日本古来の伝統的なハーモニーは、会場を厳かな空気で包んだ。6年生の植村琴巴さんは「みんないい音が出ていた。地域の伝統を知ることは大切」と振り返った。5年生の多田いち果さんは「初めてで緊張したが、練習より上手にできた。篳篥は最初は音が鳴らなかったので、来年は下級生にコツを伝えたい」と話した。

 舞台を見守った山本さんは「子どものころに雅楽に親しんで、大人になって会員として伝統をつないでいってくれたら」と期待を寄せた。