人生設計に関わる新聞記事を探す生徒ら=岐阜市細畑、城南高校
新設されたNIEルームで、新聞に目を通す生徒=同

広げて見て、深まる知識

 仕事に結婚、子育て、趣味、そして老後。卒業後の人生設計に影響する内容の記事を探そう-。2017、18年度のNIE実践校に指定された岐阜市細畑の城南高校(251人、大野良輔校長)で行われた現代社会の授業。生徒は自分の将来像を描きながら、じっくりと新聞を読み、気になる記事を切り抜いて感想や意見をまとめた。

 同校は学校法人石井学園(石井亮一理事長)が運営する調理科、製菓科の高校。調理実習などによる実践的なカリキュラムで、卒業後は約8割の生徒が就職し、板前やシェフ、パティシエなどとして活躍する。

 この授業は、社会人としての門出を控えた3年生が対象。「妊娠順番制」との見出しで、女性スタッフが多い保育現場でのルール化と人手不足の問題を報じた記事に、笹原彩瀬さん(17)は「自分のタイミングで子どもを持てないような社会は嫌だ」とし、「新聞は家族から勧められた時に読む程度だったけど、これからはもっと読んでみたい」と興味が湧いた様子。神山渉さん(17)は本紙の連載企画「ぎふ人口減を生きる」を切り取り、「高齢化が進んで地域の行事が続けられなくなるのは寂しい。自分にできることをしたい」と使命感を抱いたようだった。

 このほか、1年生は、生徒がグループになって同じ日付の各紙を読み比べる授業などもあり、生徒が熱心に紙面をめくっていた。

 同校では昨年度、教諭全14人が、少なくとも1度は授業で新聞を扱う「1人1授業」を達成。国語科では、1年の世相を漢字1字で表す「今年の漢字」の記事を読んで自分自身を表す1字を考えたり、英語科では、英文記事のキーワードを本文から推測したりと、さまざまな教科やロングホームルームなどでも工夫を凝らした授業が展開された。

 「新聞記事は授業の導入に適している。学習内容が身近に感じられるためか、生徒の反応がいい」と話すのは地歴公民科の小川直輝教諭。保健体育科の中川陽介教諭も「大切なニュースほど大きく扱われた紙面を目にすることで、ニュースの重大さが分かったという生徒が多かった」と手応えを話す。

 1人1授業は本年度も続ける方針。また、昨年度に続き、日本新聞協会主催の「いっしょに読もう!新聞コンクール」に参加する。同コンクールは、生徒が選んだ記事の感想を書くとともに、家族や友人から聞いた意見もまとめて応募する。

 現代社会の授業を行い、同コンクールに出品した生徒らの担任でもある長谷部将也教諭は「新聞は情報との出合い。広げて見ることで、興味がなかった分野の知識も深まり、人間性が豊かになる。自分の人生に生かしてほしい」と、生徒にエールを送る。

 今年4月、同校は空き教室を利用して、各紙をそろえたNIEルームを設置した。新聞は難しくて、とっつきにくい-とのイメージを取り払おうと、今後は同コンクールの出品作品を掲示したり、生徒が学ぶ調理、製菓に関する本や雑誌を並べたりする予定。同校ならではの特色を生かした環境づくりで生徒の新聞への興味、関心を引き出したい考えだ。