大きく育った大根を収穫する児童たち=昨年11月、美濃市志摩
自分たちで育てた大根を販売する児童。あっという間に売り切れた=昨年11月、美濃市曽代、道の駅「美濃にわか茶屋」

トウモロコシ、大根、米作り

 美濃市生櫛の中有知小学校では、毎年生活科の時間と総合的な学習の時間を利用して、トウモロコシなどの農産物を校外の畑で栽培する実習を行っている。農家の指導を受けながら地域と触れ合うことで、地元愛を育み、食に対する意識も高めてもらうねらいがある。

 同校の農業実習は1998年度から、市内で農業指導や特産品開発などを行っている市民グループ「市21世紀活性化塾」の須田芳廣さん(60)=同市生櫛=の協力で始まった。須田さんが友人から借りている同市志摩の畑で、1、2、3年生がそれぞれトウモロコシ、ジャガイモ、大根を育て、同市生櫛の田んぼで5年生が米を栽培している。

 トウモロコシは4月に苗を植え、6月末~7月上旬に収穫。収穫後は各家に持ち帰り、家庭で味わってもらう。ジャガイモは、1年生の3学期に植えておいて、2年生になってから掘り起こす。例年約250キロ収穫できるジャガイモは市給食センターへ送られ、市内の小中学校の給食に使われる。3年生で大根栽培、5年生で米作りへと続く。

 須田さんは「この経験を通して、食べ物が自分たちの口に入るまでの労力を知ってほしい。それをしっかり学んでくれていてうれしい」と話す。

 市内でも有名なのが3年生の大根栽培で、自分たちで販売まで行うのが特徴。1学期に品種や調理法などについて調べ、かべ新聞にまとめて知識を深める。9月に種を植え、11月の収穫日の翌日、同市曽代の道の駅「美濃にわか茶屋」で販売。収穫後の水洗いや、品種を説明するプラカード作りなど全て自分たちで行う。昨年11月の販売では、販売開始前から住民らの行列ができ、児童の威勢のいい掛け声とともに20分ほどで12種類約千本の大根が売り切れた。児童が育て上げる"中有知小大根"は同市の名物だ。

 島田昌紀校長(56)は「プランターでなく、畑で栽培を行えるというのがいい。3年生での体験は、お金の流れなどを学ぶこともできて貴重」と語り、昨年大根栽培を経験した4年生の今野舞桜さんは「販売は忙しかったけど楽しかった。一生忘れられない思い出になった」と振り返る。

 古田望教頭(59)は「地域の人、農業と触れ合い、美濃市を愛する子に育ってほしい」と願う。今年も須田さんの指導による農業実習は始まっており、先月は新1年生によるトウモロコシの苗植えが行われた。同校伝統の農業実習は須田さんの支えの下、中有知小児童の豊かな心を育み続ける。