「べたべた踊り」を学ぶ児童たち=昨年11月、高山市新宮町、新宮小学校
出土品を見て、地元の歴史を学ぶ児童=高山市赤保木町、市風土記の丘学習センター

 岐阜県内の学校は郷土教育に力を入れ、独自のカリキュラムを構築する。高山市新宮町の新宮小学校でも「しんぐう学」と銘打った授業を展開し、魅力あふれる地域の宝を子どもたちに伝えている。

 5月上旬。6年生約70人が、市内の遺跡の出土品を展示する市風土記の丘学習センター(同市赤保木町)を訪れた。男子児童は「自分の町の歴史を知れて良かった。昔に生まれていたら面白かっただろう」と太古に思いをはせた。今後は近くの遺跡を見学し、理解を深める。

 しんぐう学は2020年度に試験的に始め、22年度から本格的に取り掛かる。「体験して深く知る」「人の生きざまに触れる」「地域に貢献する」「まちづくりに参画する」の四つの柱で実施。昨年度は3~6年生が対象だったが本年度は1、2年も加え、地域の産業や防災、環境、歴史といった幅広い分野で学んでもらう。ほとんどの授業で住民を講師に招くため、地域の協力が欠かせない。

 20年度の6年生は、古くから伝わる「べたべた踊り」を教わった。新宮町内会が発行した『新宮あれこれ』などによると、歴史は古く、安土桃山時代から地元の神社の例祭で踊り継がれてきたとされる。明治20年代から踊る人は減り、昭和30年代には姿を消した。平成に入り、かつて踊った住民が復活させ、今では夏のイベントで踊る。児童に教えた町内会史跡文化財保存委員の一人、荒家堅吾さん(54)によれば、踊れる人は少なくなったといい、学校から授業の話を聞き喜んで引き受けた。「ありがたい機会だ。子どもたちはしっかり踊ってくれたし、自分たちも楽しめた」と振り返る。「踊りを覚えた子どもが、今後に伝えてくれればうれしい」と期待する。

 「新宮地区は自然豊かで歴史もある。当たり前になりすぎて気づけないこともある」と話すのは、しんぐう学を担当する西尾安紀子教諭(42)。昨年度実施してみると、子どもたちから「良い所がたくさんあると分かった」「行事に参加したい」といった感想が寄せられた。地元への思いが強まったと感じている。

 ゴールは、柱の一つにもあるように、町づくりに加わること。地元の行事に参加したり、まちづくり協議会と町の将来を話し合ったりする計画だ。西尾教諭は「古里を愛する心を育み、未来の新宮地区を支える人になってほしい」と願う。