地域のボランティアに見守られて通学路を進む子どもたち=岐阜市今嶺

 「子どもの通う学校で教室が足りなくなるかもしれない。一体どうなるのだろう」。そんな心配の声が、小学生の子を持つ岐阜市の父親から岐阜新聞「あなた発! トクダネ取材班」に寄せられた。この少子化の時代になぜ? 親子が暮らすのは同市の市橋小学校区。児童数は市内最多のマンモス校だが、ここ15年間は770~820人台で高止まりの状態という。取材すると、教室不足に陥ろうとしている背景には、学校が担う役割の多様化があった。

 通学路の一本道が子どもたちの交通安全帽の黄色で染まった。「ここは500人ぐらい通るでね」。誘導棒を手に毎朝ボランティアで道端に立つ男性が教えてくれた。通勤ラッシュが重なり、交通量は多い。

 児童数は802人(4月時点)。校区にはJR西岐阜駅があり、利便性の高さから子育て世代を中心に人気で、住宅地の地価も県内上位。市教育委員会は2025年にかけて900人近くに増えると見通すが、その後は減少に転じると推計し、適正な施設規模を測りかねているのが実情という。

 不足感の要因は、教室の役割の変化にもあるようだ。一つは、保護者が帰宅するまでを過ごす放課後児童クラブ(学童保育)だ。児童福祉法が15年に改正され、対象児童を3年生までから6年生までに拡充。同校では2教室を充て、校外にも3カ所ある。島小(同市北島)では24年にかけて児童数の増加が見込まれることから、市は26日開会の市議会定例会に提出する一般会計補正予算案で、敷地内に4教室分を確保できる学童保育の専用施設を建てる実施設計費を計上する。

 心身に障害のある子らを受け入れる特別支援学級の拡大も要因の一つ。06年の教育基本法改正で対象児童の幅が広がり、県内小学校の特別支援学級で学ぶ児童は09年の1691人から19年は2996人に増加。市橋小には4クラスあり、来年度は自閉症・情緒障害者学級が1クラス増える見通しという。

 市橋小の中田雅章校長は「教室の配置替えなど、既存の施設でどこまでできるか」と話す。廊下の突き当たりで出入り口が一つしかないなど防犯上は利用に適さない教室もあり、学校単体での対応には限界も見える。

 新型コロナウイルス対策で、文部科学省がより少人数の30人学級への移行を検討するなど、教室ニーズは膨らむ可能性があり、保護者からは増築や建て替えを望む声が上がる。ただ、ハードルは高い。中学校なども含め市内で築30年を経過した校舎などの施設は8割以上を占め、一斉に大規模改修や改築が必要な時期を迎えるためだ。

 市教委は今年3月、今後30年間の維持管理の方針などを示す「市学校施設長寿命化計画」を策定。大半の学校で児童生徒数が減少しており、小中一貫校の整備や学校の統廃合など、施設の配置や規模を見直すことで更新コストを平準化していく方針だ。一方、市橋小の状況は、そうした市全体の傾向とは異なる。市教委事務局の野田薫次長は「学校に多様な機能が求められる中で、学校ごとの状況も見極めながら対策を考えていく必要がある」と話す。

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