スマートグラスとVR、電子黒板導入 完全理解に向けて一役

 サンビレッジ国際医療福祉専門学校(通称サンビ校)にとって、本年度はデジタルトランスフォーメーション(DX)元年。デジタル機器を効果的に取り入れることで、より深い学びにつなげる取り組みを本格化させました。

専門職がスマートグラスを着けて利用者をケア=揖斐郡池田町白鳥、リハビリセンター白鳥※スマートグラスによる撮影は利用者の同意を得て実施

 その一つがスマートグラス(映像と音声を同時に送信できるメガネ)の活用。サンビ校は、社会福祉法人が運営していることから、系列施設を“第2の校舎”、福祉施設の利用者は多くの気付きを与えてくれる“先生”として、学生は本物の現場でさまざまな経験を重ねながら実践力を身に付けてきました。この進化形として、スマートグラスを着けた専門職が福祉施設で利用者をケアし、学生はその様子を教室で見ることで、専門職がどこに視線を送って利用者の状態を把握しているかが手に取るようにわかる授業を始めました。別のカメラでは全体の様子を映しており、2つのカメラで動きを確認することができます。作業療法学科1年の林亜美さんは「スマートグラスのおかげで作業療法士がどこを見ながら訓練しているかがよくわかりますし、オンラインでつながっているため途中で質問もできてありがたいです。理解が深まっていることを実感できています」と手応えを話します。

VRヘッドセットを装着し、教員の今井勝記さんのサポートで頭部の構造を学ぶ学生

 VR(仮想現実)ヘッドセットを使った授業は、今秋の開始を予定。ソフトウェア開発を手掛ける「東京コンピュータサービス」と協力して1年近くかけて「(仮)VR解剖学アプリ」を作製。脳の教材はほぼ出来上がりました。上肢、下肢も完成間近です。

 脳の教材は、ヘッドセットを装着してモーションコントローラーを動かすことで、脳や血管、眼球などを解剖することができ、コントローラーを動かせば、上側からや下側からの観察、拡大や縮小も可能です。ヘッドセットで見ている映像は、電子黒板に映し出すことができ、他の学生と一緒に確認ができます。

 作業療法学科の2、3年生有志を集めて行った模擬授業でVR解剖学アプリをお披露目したところ、全員が興味津々。3年の西田胤さんは、最低限の説明を受けただけでスイスイと操作し「ゲーム感覚で楽しい」、3年の横山真理子さんはパーツを丁寧に取り出し「何時間でも見ていられますね」と夢中になって学んでいました。

 脳の血管を取り出し、さまざまな角度から考察したところで廣瀬武総学科長が電子黒板のスクリーンショットを撮り、脳血管障害の発症メカニズムを説明。ポイントとなる部分に印を書き込んでいく様子に、3年の林夢舞さんは「すごくわかりやすく、もっと早く導入してほしかったぐらい。それでも今年導入していただいたおかげで、VRを使って国家試験対策ができるので心強いです」と話していました。

 作業療法学科教務主任の今井勝紀さんは「パーツを大きくしたり小さくしたり、角度を変えたりできるので、教員としても紙の教材よりも説明しやすい。現場で得た深い学びに加え、DXを活用することで理解がより深くなるため、卒業後の仕事で即生かしてもらえるのでは」としています。